天野理事長ブログ&スケジュール

2017.08.15

リンパ脈管筋腫症:(LAM)②

天野惠子理事長の投稿です。

診察する医師

ところが、彼女が順天堂病院を受診したところ、今度は、リンパ脈管筋腫症:lymphangioleiomyomatosisLAM)と告げられる。

 

リンパ脈管筋腫症は、平滑筋に似た特徴をもつLAM細胞と呼ばれる細胞が、肺、リンパ節、腎臓などで、比較的ゆっくりと増える病気である。

 

肺では、LAM細胞が両側の肺に散在して増加し、其れに伴ってのう胞と呼ばれる小さな肺の穴が複数生じ、進行した場合は息切れなどが生じる。

LAMには、結節硬化症という病気に伴って発生する場合(結節性硬化症に合併したLAM)と、単独で発生する場合(孤発性LAM)2種類があるが、彼女の場合は孤発性とのこと。

 

日本でのLAMの有病率は人口100万人あたり1.94.5人。妊娠可能な年齢の女性に発症するが、閉経後に診断される例もある。

 

結節性硬化症では、TSC1またはTSC2という遺伝子に異状が認められる。

この遺伝子は、細胞の増殖を調節するタンパク質分子を作り出す。この遺伝子の異常が原因となって、過剰な増殖力を持つLAM細胞が出現すると考えられている。

孤発性LAMでも、LAM細胞にTSC2遺伝子の異常が検出されると報告され、原因の一つと考えられている。結節性硬化症は常染色体優性遺伝を示す疾患であるが、孤発性LAMは遺伝しない。

 

主な症状は肺の病変による、労作時の息切れ、咳、痰、血痰、喘息用の喘鳴など。

肺が破れて気胸を生じることがあり、胸痛や呼吸困難を認める。気胸は、しばしば初発の症状として見られ、再発を繰り返す場合がある。「乳び」と呼ばれるリンパ液が胸水や腹水となって貯留することがあり、其れに伴う呼吸困難や腹満を認める。

結節硬化症では、LAMによる症状のほかに、てんかん、皮膚病変など結節性硬化症による症状も認められる。

 

治療としては、症状や合併症のある場合はその治療を行う。

閉塞性換気障害には気管支拡張薬、呼吸不全には酸素吸入、繰り返す気胸には外科的治療、胸水・腹水には内科的・外科的治療、腎血管筋脂肪腫から出血することがあり、その際には血管塞栓術や外科的処置が必要となる。最近では、シロリムス、エベロリムス(結節硬化症のLAMのみ)が有効との報告がある。

 

予後としては、LAMはゆっくり進行し、日本の疫学調査では、10年後生存率は85%であった。

 

彼女の現在の腫瘍の大きさは16cm x 11cm。彼女が出した結論はストレス回避のため仕事を縮小し、薬・外科治療を行わず、しばらく様子を見る、でした。

 

参考文献:http://www.nanbyou.or.jp/entry/173

 

 

性差医療情報ネットワーク理事長

静風荘病院 特別顧問 女性外来医師 天野 惠子

 

 

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