天野理事長ブログ&スケジュール

2016.05.20

「夢の薬」高額な抗がん剤の登場 ①

天野理事長の投稿です。

免疫チェックポイント阻害剤の「オプジーボ」が医療費における費用対効果に関する論争を巻き起こしています。

 

人間の身体は「免疫」によって守られています。免疫は、身体にとって有害な病原体や異常細胞を監視し、攻撃や排除をします。オプジーボはこの免疫機構を利用してがん細胞を消滅させる新しい抗がん剤です。

 

オプジーボは、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体で、活性化T細胞に発現するPD-1受容体に結合します。

PD-1は生体防御と自己免疫疾患の両方に必須なTリンパ球の、過剰な活性化を抑制することが知られています。PD-1が働きすぎると免疫抑制が強くなり、がん・感染に無抵抗となります。逆にPD-1不全は、多発性硬化症、Ⅰ型糖尿病、リュウマチ、全身性エリテマトーデスといった難治性自己免疫疾患の遺伝的危険因子です

 

通常、免疫細胞の司令塔である「樹状細胞」が、がんを発見すると、攻撃を担当する「T細胞」にがんの特徴を教えて、攻撃の信号を発します。T細胞はそれを受けて、攻撃すべき対象を見分けて攻撃に移ります。

ところが、攻撃されるがん細胞も無抵抗ではなく、免疫の攻撃を回避するような仕組み「がん免疫逃避機構」を有します。がん細胞がT細胞に対して「攻撃を抑える信号」を送り、免疫が正常に働かなくなるのです。T細胞に発現するPD-1に、がん細胞に発現するPD-L1が結びつくとT細胞が攻撃をやめてしまうのです。

オプジーボは、PD-1抗体を投与することにより、がんの免疫逃避機構を阻止する薬剤です(図:抗がん剤グラフを参照)。

 

現在オプジーボは悪性黒色腫および切除不能な進行・再発非小細胞肺がんに対して保険が適応されています。

抗がん剤グラフ

血液細胞

 

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