天野理事長ブログ&スケジュール

2016.04.28

「夢は9割叶わない。」

これは2014年に発行されたある本のタイトルですが、皆さまはご存知でしょうか?

もしかしたらお読みになったことがある方もおられるかもしれません。

 

この本の著者は、空前のロングセラー大ヒット作品となっている漫画「課長 島耕作」シリーズの作者、弘兼憲史(ひろかねけんし 1947年生まれ)さんです。

弘兼さんは2007年に紫綬褒章も受章されています。

 

夢も何もないような刺激的なタイトルですが、実は「本当に夢を叶えるための」主に若者に向けたメッセージが詰まった素晴らしい本なのです。

是非手にとって読んで頂きたいのであまり詳しくはご紹介できませんが、この本から私がなるほどと実感した部分を今回はご紹介したいと思います。

 

弘兼さんは大学を出て、松下電器(現在のパナソニック)に入社したいわゆるエリートサラリーマンでした。

しかし、彼は入社後わずか3年後の26歳の時に、漫画家になりたいという夢を追求するため、会社を辞めて漫画家の道に転向します。なんとその翌年には大手出版社の有名誌からデビューを果たし、とんとん拍子に実績を重ねます。

デビュー9年目の1983年には、2016年現在もいまだに連載が続く30年にわたる大ヒット作品「島耕作」シリーズを開始されます。

 

まさに脱サラの勇者であり、漫画家志望者の憧れの的であり、紫綬褒章受賞・徳山大学客員教授として第一線の有識者でもあります。

 

「漫画家になりたい」という夢をアメリカンドリームレベルで叶えた、そんな弘兼さんが「夢は9割叶わない。」とおっしゃるのですから説得力があります。

 

世の中そんなに甘くない、おいしい話はない。みんなが簡単に口にする「夢」ならば、9割どころか99%叶わない、そう指摘されています。

 

本当にその通りですね。叶わないからこそ、私たちは簡単に「夢」といってしまうのかも知れません。そうなのに夢といいつつもしがみついてしまったりもします。

 

しかし、1割の人、または1%の人は、誰もがうらやむ凄い夢を叶えています。

彼もそうですね。

 

それは偶然ではない、ルールがある、と訴えているところが、彼の非常に素敵なところだと思います。

 

私が彼の本を拝読して得た一番の知恵は、

最初から「自作が有名誌で大ヒットを飛ばし、作品が映画化され、30年も連載が続くような超一流の漫画家になりたいです!」などとは思っていなかったからこそ、彼は成功したのだ、ということです。

 

残念ながら多くの青少年が「超一流の漫画家になってやるぞ!」という夢を漠然ともって頑張っているのではないでしょうか。

 

芸大に受かりたいといって6年もの間チャレンジしている人を、彼はキッパリと、賞賛しません。「絵が好きだから芸大目指して何年も頑張っている!」なんて、ちっとも凄くないし、やめたほうがいい、と彼は考えているのです。

 

夢は「それをかなえるための時間感覚(タイムリミット)」と「実現可能なレベルでの計画性(段取り)」がないならば叶わない、と、彼はばっさりと切り捨てておられます。

誰もがうらやむ壮大な夢を叶えた彼の言葉だからこそ、説得力がありますよね。

 

実際、弘兼さんは26歳で会社を辞めるとき、30歳までにヒット作品が出なければ漫画家を諦めてまた会社員に戻ろう、と自分にタイムリミットを課していたそうです。

なぜなら彼は子どものころから漫画を描くことが大好きで、あらゆる先人の手法を徹底的に研究していました。そして沢山の作品を読んでこられました。

 

だからこそ、自分の作品のオリジナリティや世間のニーズ把握(流行のキャッチ)に自信をもっていたのです。そこまで事前に周到な準備をしていて数年も目が出ないのならば、さすがに自分のセンスや絵に問題があるとあきらめよう、と決めています。

 

夢、というからには嫌なことを夢にする人はいませんから、まずは自分の好きな何かにとりくむわけです。その好きな何かをまずは小さな夢(目標)で活かせなければ、大きな夢にはつながりさえしません。

そしてその小さな目標に活かすのさえも何年もかかるようでは、それは才能がないのでしょう。

 

私は日本における女性の妊産期問題を問題視している一研究者ですが、日本は弘兼さんの言う「タイムリミット」「まずは実現可能なレベルで成功させる段取り」の視点が欠落しがちな社会ではないかと感じています。

 

それは古くは中国にならい、第二次世界大戦後はアメリカにならって、成功マニュアルありき、で他国にならって経済成長してきたお国柄からくるものなのかもしれません。

 

素敵な夢ほど、成功マニュアルがありませんから、「いつかは、そのうち、なんとなく」ではなく、自らタイムリミットを設定し、実現可能レベルの小さな目標の連鎖におきなおして段取りを組むことが不可欠、そう弘兼さんは教えてくれた気がします。

 

 

㈱ニッセイ基礎研究所 生活研究部 

JADP上級心理カウンセラー 天野 馨南子

青空とハト

 

 

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