天野理事長ブログ&スケジュール

2016.05.06

気剤を使いこなす

理事長のコラムです。

 

今年3月のNAHW東京支部学術集会の講演テーマは、成城漢方内科クリニックを開業されている盛岡頼子先生による「日常の診療より~気剤を使いこなす~」でした。

 

盛岡先生の語り口はいつもゆっくりと非常にわかりやすいのが特徴です。

今回のお題は、半夏厚朴湯(先生が特に好きな漢方とのこと)、香素散、抑肝散、加味逍遥散、柴胡加竜骨牡蛎湯と柴胡桂枝乾姜湯。

症例提示をしながら、かみ締めるようにお話を進めます。今回の先生のお話の特徴は、半夏厚朴湯VS香素散、抑肝散VS加味逍遥散、柴胡加竜骨牡蛎湯VS柴胡桂枝乾姜湯と、似たような奨励で使い分ける2剤を対比されながらお話されたことです。

 

-鬱の2剤について

●半夏厚朴湯:

動悸、憂鬱感、不安感、不眠などを訴え、のどの詰まった感じや、呼吸困難感、頭重・頭痛(締め付けられるような)、めまい、心下部の詰まった感じ、吐き気、腹部膨満感などが認められるケースに処方される。どちらかというと実証よりで、症状は「のどが詰まる」「胸が詰まる、苦しい」「お腹が張って苦しい」など、具体的。几帳面で理路整然と話す人が多い。

 

●香素散:

虚弱な人の感冒、抑うつ状態や頭痛、めまい、時には魚による蕁麻疹にも処方される。虚証よりで、声が小さく、どこか悲哀感があり、訴えが一定せず、ぼそぼそと小声で訴える人が多い。

 

-気上衝の2剤について

抑肝散、加味逍遥散は、どちらも柴胡、茯苓、朮、甘草、当帰がベースの漢方で、抑肝散には鈎藤鈎と川芎が加えられ、加味逍遥散には牡丹皮、芍薬、山梔子、生姜、薄荷が加えられています。稲木一元「臨床医のための漢方薬概論」では、抑肝散の目標は攻撃的で怒りっぽい、加味逍遥散の目標は抑うつ的、心気症的とあるが、盛岡先生の臨床現場での印象は抑肝散の目標は、どちらかというと怒りを内に溜め込む人、加味逍遥散は怒りを外にぶつける人ということでした。

 

-精神不安定で柴胡剤の適応の場合の2剤について

精神不安定で胸脇苦満を有し、腹部の動悸を認めるとき、虚証では柴胡桂枝乾姜湯を、実証であれば柴胡加竜骨牡蛎湯を用いる。

 

私の経験では、先生の提示された気剤はどれも極めて有効です。

柴胡加竜骨牡蛎湯は中間証でも使えます。

女性の心身症には、是非漢方を使ってみて下さい。

お茶・花や葉とともに

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