天野理事長ブログ&スケジュール

2016.04.12

漢方とノーベル賞②

理事長のコラム、漢方とノーベル賞①の続編です。

 

マラリアの特効薬(アーテミシニン)の誕生

 

マラリアの治療薬としては、キニーネ、クロロキン、メフロキン、プリマキン、ファンシダールなどがあります。クロロキンは他の薬剤よりは副作用が少ないため、予防薬や治療の最初に試す薬として使われてきました。

 

19675月、毛沢東は523計画というマラリアに対する新薬開発の秘密プロジェクトを立ち上げました。

其の計画のリーダーが屠さんでした。中国は、北ベトナムの同盟国として、1950年代から北ベトナムを支援してきましたが、1960年~1975年にかけて繰り広げられたベトナムの独立と南北統一を巡っての戦争(ベトナム戦争)では、マラリアで多くの死者を出し、また、従来の特効薬であるクロロキンに対する抵抗性も出始めていました。

 

マラリア原虫は遺伝子を変化させ、薬剤耐性を獲得し、免疫防御を巧妙に回避する方向に進化してきています。世界中の科学者が数十万と言われる数の化学合成物の有効性を検査しましたが、いずれも失敗に終わっています。

 

屠さんは、1969年中国の伝統的な薬に注目し、様々な薬草を試す中で、マラリアに効力があると思われる薬草に出会いました。

 

それが青蒿(和名:クソニンジン)です。

青蒿という生薬は、中国医学では、マラリアなど様々な感染症や炎症性疾患の治療に古くから使用されていました。

彼女のグループは、其の薬効成分であるアーテミシニンの抽出方法を提案し、マウスとサルで効果を認め、人間での効果と安全の確認後、1977年、研究報告を行いました。

 

人間での、最初の被験者は屠さん自身でした。アーテミシニンは、中国内では1980年代から使われ始めましたが、世界保健機構(WHO)に認可されたのは2000年、本格的に使用開始されたのは2006年です。世界中で多くの命を救うまでにほぼ30年かかりました。

 

アーテミシニンの登場により、死亡率が20%下がり、アフリカに限れば、毎年10万人もの命が救われていると、ノーベル財団では其の受賞理由を述べています。

 

話は変わりますが、201510月、WHOアドバイザリー グループは、グラクソ・スミスクラインにより開発された抗マラリア・ワクチン(RTS,S/AS01)が、アフリカ7ケ国における臨床試験の結果が良好であるとして、このワクチンによるパイロット試験が開始されるよう勧告しています。

アフリカ象

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