2016.02.02
「高血圧との上手なつきあい方」
山形県立中央病院 内科(糖代謝内分泌) 鈴木 恵綾先生のコラムです。
年が明け、1年の中で最も寒い季節となりました。この時期は、寒さのために血圧が上がりやすい時期でもあります。今回のコラムでは、高血圧と上手につきあうためのポイントを、簡単に述べたいと思います。
高血圧は、なぜ怖いのでしょうか?高血圧は動脈硬化の重要なリスク因子です。高い血圧が持続すると、全身の血管で動脈硬化が進行します。その結果、脳出血や脳梗塞、狭心症や心筋梗塞、腎不全、眼底出血などの合併症が生じ、最悪の場合、生命に関わることもあります。これらの合併症を予防するために、血圧を良好な値に保つことが大切なのです。
では、日常生活の中で、どのような事に気をつければよいのでしょうか?具体的には、「減塩・バランスのよい食事・適正体重の維持・運動・節酒・禁煙」が有効とされています。
ほんの少しの心がけで、大きな効果を期待できるのが、「減塩」です。
実際に多くの患者さんが、減塩の励行で血圧が低下し、その効果に驚かれています。以下に、日常生活に取り入れやすい、具体的な方法を挙げます。
〜減塩の心がけ6箇条〜
① お醤油やお塩はいきなりかけるのではなく、味をみてから必要な分をつけるようにする。
② スープやお味噌汁は1日1杯にして具だくさんにする。
③ 塩分の多い加工食品は控える。
④ 出汁を効かせたり、トマトソースや酸味といった塩分以外の味付けを工夫する。
⑤ 麺類の汁は全部飲まないようにする。
⑥ 外食のメニューは塩分の少ないものを選ぶ。
普段の生活の中で無理せずできるところから取り組み、減塩を日常生活の一部とし、継続することがポイントです。塩分を控えることで体の中から余分な水分が抜け、むくみが取れるので、体重が減ることも期待できます。また、野菜や果物に多く含まれるカリウムは、塩分を体の外に排出する働きがあります。野菜や果物、魚を積極的に食べ、油や揚げ物を控えることで、「バランスのよい食事」を心がけましょう。
良好な血圧を保つためには、有酸素運動も有効です。
体重は、体格指数 (Body Mass Index : BMI)が25を超えないことが目標です。ウォーキングやサイクリング、水泳など、心地よい汗をかく程度の運動で、適正体重を保ちながら、高血圧を予防しましょう。
さらに、大量の飲酒は、睡眠中の過度の降圧や早朝高血圧を引き起こします。
1日当たりエタノール換算で、男性は20〜30ml以下、女性は10〜20ml以下の飲酒量が好ましいとされています。エタノール20〜30mlは、ビール中瓶1本、日本酒1合、焼酎お湯割り1杯、ワイングラス2杯の量です。
お酒は程よい量を、楽しくいただきましょう。
一方で、タバコは百害あって一利なしです。喫煙により、血圧の上昇のみならず、動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞、脳血管障害などの合併症が、さらに進行しやすくなります。これは受動喫煙でも同様です。家庭や職場で、配偶者や同僚の受動喫煙を受けている女性は、受けていない女性よりも家庭血圧が高い。」という研究報告もあります。ご自身のためにも、家族や周囲の人のためにも、禁煙を心がけましょう。
その他、ストレスや気温の変化、睡眠も、血圧に大きく影響します。家庭や職場での精神的ストレス、頭痛や肩こりといった身体的ストレスは、いずれも血圧上昇の要因となります。寒さで血圧は上昇します。不眠や、睡眠時無呼吸症候群は、早朝高血圧の原因として重要です。
身体と心にやさしい生活が、良好な血圧につながります。できることから、無理のない生活習慣改善を心がけ、高血圧による合併症を予防していきましょう。
山形県立中央病院 内科(糖代謝内分泌) 鈴木 恵綾