天野理事長ブログ&スケジュール

2015.12.24

カウンセリングの誤解

みなさんはカウンセリングというと何を思い浮かべるでしょうか?

「悩んでいる人に的確なアドバイスをすること」と思いつく方も少なくはないでしょう。しかし、カウンセリングはむしろアドバイスであってはいけないのです。

 

カウンセリングにおいて最終的に目指すものは、クライアントの自己解決能力を引き出すことだと思っています。考えずにいつもアドバイスを他人に求めていれば、その人に依存することになり、最悪、依存した相手に感情が振り回される不安定な状態になりかねません。

カウンセリングを勉強する際に、「カウンセリングはアドバイスではない」ことを心がけるために、次のような話があります。以下は少しアレンジさせて頂いています。

 

少年がいて、飢えに苦しんでいます。少年の悩みは飢えです。ひもじさをどうにかしてほしいとせがまれます。ここで、助けを求められた人が持っているパンを全て差し出す、というのはすぐに飢えの解消にはなりますが、そのパンで得たエネルギーはすぐに尽き、また少年は飢えに苦しみます。勿論、パンを与えることは全く不要な行為ではないかもしれませんが、少年はまだ飢えから救われたとはいえません。

それだけではなく、またあのように沢山のパンを与えてくれる人が来るかもしれないという淡い期待をその少年に植え付ける可能性もあるのです。これは危険なことだと思います。

 

なぜ少年はそのような飢えの続く状況に陥ったのか、原因を本人に考えてもらう。気づいてもらう。一緒に考えるけれどもこちらからこたえはださない。

そして、自ら飢えを解決できるような収入を得られる方法をともに考えてゆく。この場合も選択するのはすべて少年です。

カウンセリングが目指すものはこれだと思います。

 

結局人は一人で生まれ、一人で死んでいく。その孤独を支えあうために人は助け合うのですが、根本にこの「一人で生きていく」自覚とそのための基本的な考え方ができなければ、その人に差し出される手も少なくなります。

そんな冷たい社会は酷い、のでしょうか?

決して冷たいわけではなく、誰しもそんなに強くはなく、万能の神様ではないからではないかと思います。所詮は同じ人だから、です。

 

カウンセリングを多く経験して思うことですが、個人的には、自らの弱さを知り、素直に認めることから、その人の本当の強さが生まれると思っています。

柳に雪折れなし、ということわざに少し通じるところがあるかもしれません。

そして、そんな弱い自分でも、一緒にやっていこう、やってみようよ、そう思っていただける人たちと自分は頑張れればそれで十分だ、そんな穏やかな気持ちが生まれることが、その人の強さを生み出すのではないでしょうか。

 

㈱ニッセイ基礎研究所 生活研究部

JADP上級心理カウンセラー 天野 馨南子

パン

 

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