天野理事長ブログ&スケジュール

2015.12.17

睡眠を考える~からだとこころの健康のために~

今回は千葉県柏市の春日医院 春日葉子先生の寄稿です。

成人の30%以上が入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難などいずれかの不眠症状を有していると言われています。

不眠は生活習慣病やうつ病のリスクとなって医療費を増大させ、日中の集中困難や倦怠感は生産性の低下および産業事故の増加につながるなど、さまざまな人的および社会経済的損失をもたらすことが明らかで、公衆衛生学上の大きな課題のひとつです。

このことを踏まえ、厚生労働省は11年ぶりに健康づくりのための睡眠指針2014、睡眠12箇条を策定しました。睡眠の重要性を示し、各世代における睡眠に対する理解を深めるとともに睡眠衛生を指導する内容となっています。

日本人の平均睡眠時間は徐々に短縮しており夜型化が進行しています。40代、50代の働き盛りの年代は睡眠不足が多く、とりわけ女性の有職者の睡眠時間が短いことが特徴です。睡眠不足の背景には、特に都市部における長時間労働と長距離通勤があるようで、なかなか解決しがたい問題です。 

成人のみならず現代の子供の3-4人に1人が睡眠問題を抱えていて、学年が上がるにつれ就寝時刻が遅くなり、生活リズムが夜型傾向になっていることが問題視されています。有職者の母親の労働時間が長いほどその傾向は強くなっており、大人のライフスタイルの変化が小児の睡眠に大きな影響を及ぼしていることが伺えます。

反対に高齢になると睡眠時間そのものが短くなり浅くなることを理解し、寝床で長く過ごさないことが大切です。寝床に入る時刻が遅れても、朝起きる時刻は遅らせず一定時刻に起床し、太陽光を取り入れることで入眠時刻は徐々に安定していくと言われています。

 

現在の不眠症治療の主流は睡眠薬を用いた薬物療法です。

しかし、薬物療法単独では十分に満足できる長期予後とアドヒアランス(編者注:患者が医師の指導に基づく服薬を遵守すること)が得られないケースが多いことに留意する必要があります。

1か月以上持続する慢性不眠症に陥ると、その後も遷延(せんえん)しやすく、極めて難治性になることが明らかにされており、必然的に治療薬は長期使用かつ高用量になりがちです。そのような事態になる前に、薬物療法と平行して出来るだけ早期から睡眠衛生指導や認知行動療法(保険適応外)などの心理・行動的介入を行うことが推奨されています。

そして漫然とした長期処方を減らすために、治療途中で薬物療法の妥当性を適宜評価する姿勢が、処方する医師に求められています。

 

春日医院(千葉県柏市)医師 春日葉子

睡眠中の女性

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