天野理事長ブログ&スケジュール

2016.01.19

睡眠時無呼吸症候群について

今回は虎の門病院附属健康管理センター医員 大本由樹先生のコラムです。

 

先日、私の外来に来られた患者さんが、診察室に入るなり

“先生、あの検査してもらってよかったです。世界が変わりました”

とおっしゃっておられました。

 

この患者さんは睡眠時無呼吸症候群と診断され、CPAP(編者注)での治療を開始された方です。

現在、私はMRIを使用して、冠動脈検診をしていますが、数十分間、仰向けで心電図と呼吸を見ながら検査をするのでこの疾患の方が結構見つかります。

この方も、ご自身では今までの睡眠状態が若いころから続いていたので、医師の問診まで気づかれなかったのです。

 

●睡眠時無呼吸症候群とは?

 

睡眠時無呼吸症候群は、かなり以前のことになりますが、電車の運転手さんの事故で認知されるようになりました。

睡眠時無呼吸症候群には中心型と閉塞型とがありますが、一般的に知られているのは閉塞型です。睡眠中に気道が閉塞することにより、体内の酸素濃度が低下し、臓器の低酸素状態をきたします。この疾患は、高血圧、糖尿病をはじめ様々な生活習慣病発症と関連があります。例えば、睡眠時無呼吸症候群のない群との比較で、高血圧は2.89倍、夜間心臓突然死は2.57倍、脳卒中・脳梗塞は1.97倍リスクが高くなると言われています。また睡眠の分断による日中の眠気、集中力低下により交通事故を起こす確率も上昇します。

 

●睡眠時無呼吸症候群の性差

 

睡眠時無呼吸症候群も性差のある疾患で、その男女比は3:1ですが、閉経後女性の有病率は上昇します。その原因としては、ホルモンの変化による呼吸中枢刺激の変化や舌筋の筋力の低下等が言われています。

しかしながら実際の受診の男女比は10:1と言われています。男性の場合、奥様が気づく場合が多いのですが、女性は家族の中で最後に就寝する方が多く、見つかりにくいのではないかとも言われています。

 

●睡眠時無呼吸症候群の症状

 

症状に男女差はないといわれています。一般的には日中の眠気・熟眠感の欠如などがあげられますが、眠気のみならず、早朝の高血圧、頭痛、夜間の覚醒、起床時の口渇なども睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

先日、外来に見えた方では、夜、何度もお小水で目覚められていたのが、治療によって目覚めなくなったとおっしゃられていました。

 

お心当たりのある方はぜひ検査をお受けになることをお勧めします。機械を借りて、1晩ないしは2晩(施設により異なります)自宅で寝ていただいた記録を解析し、診断をします。

虎の門病院健康管理センターでは、現在、40歳以上の女性ドック受診者の方を対象に睡眠時無呼吸の検査の研究を行っております。

 

 

編者注

「Continuous Positive Airway Pressure」の頭文字をとって、「CPAP(シーパップ)療法:経鼻的持続陽圧呼吸療法」と呼ばれる。

寝ている間の無呼吸を防ぐために気道に空気を送り続けて気道を開存させておくというもので、 CPAP装置からエアチューブを伝い、鼻に装着したマスクから気道へと空気が送り込まれる。

 

 

虎の門病院附属健康管理センター医員 大本由樹

http://www.toranomon-dock.jp/sp/about/staff.html

手をそろえて睡眠する女性

Copyright © 2014 Japan NAHW Network. All Rights Reserved.