天野理事長ブログ&スケジュール

2015.12.02

太陽からの贈り物

カウンセリングをしていると、うつ的な症状でいらっしゃる方にほぼ100%といっていいくらいある訴えが「寝られません」です。

中には精神科や内科から睡眠薬を処方されている方もいらっしゃいます。

不眠症状の犯人(原因)探しを一生懸命されているのですが、もともとのショックは何であれ、不眠が長く続いている方には共通の生活スタイルがあります。

 

寝られないので、夜真っ暗にすること。

夜は雨戸や遮光カーテンでどの窓からも光が来ないようにばっちり対策して寝ようとされています。もしくはそういう意図はなかったが、もともと寝室に窓がなく電光照明のみの寝室の方であることが殆どです。

少なくとも私の経験上「明るい日差しが差し込む部屋で朝を迎えます」とこたえる方は皆無でした。

 

しかしこれは期待されている効果と全く逆の効果をもたらしていますよ、とお話します。

夜行性でもない限り動物は日の出とともに起床し、日没とともに休みます。ヒトもまた同じ動物です。太陽の光が作り出す睡眠リズムで寝起きできるように作られているのです。

ところが調子が悪いからといって一日寝室で横たわり、昼も夜もなく生活している方には早晩、睡眠リズムに支障が生じます。めちゃくちゃな時間に寝たり起きたりを繰り返すようになっていきます。

 

それを「心身の不調で寝られなくなった」と思い込んでしまい、寝るために悪戦苦闘した結果、さらに寝られなくなっている方が多いのです。

 

ご夫婦で来院された方のケースがわかりやすいので、ご紹介します。うつと倦怠感で長く悩んでいる、という奥様の問診表作成のお手伝いをしている時のことですが、とにかく寝られないのが一番の悩みです、と私からするといつもの訴えがでてきました。そこで、寝室の窓は夜どうしていますか?とお聞きすると、騒音と光をさえぎるために雨戸をしっかり閉めている、とこれまた予想通りのこたえが返ってきました。

 

そこで自然光の大切さをお話しました。そして、とにかくレースカーテン程度かもしくは窓には何も遮光をせず、朝の光をまぶたできちんと感じられるように寝室を変えてくださいとお願いしました。寝場所を変えられるなら、朝一番明るいお部屋に変えてください、できるだけ窓際にベッドを置いてください、とも伝えました。追加で、最も外が明るい朝10時くらいまでの屋外の光をベランダ・庭に出でたりして出来る範囲で長く浴びてください、とお願いしました。

 

一ヵ月後、またそのご夫婦がいらっしゃいました。蒼白だった奥様の顔色が普通に戻り、表情が戻っておられ、ご主人は大喜びでした。ご主人は「いやあ、目からウロコでしたよ。こんなことで寝られるようになるんですね。薬にばかり頼って増量していくのが怖かったから本当に嬉しい。」そうおっしゃいました。

 

私は医師ではありませんので診断は出来ませんし医療としての治療方法はお示しできませんが、メンタルヘルスのカウンセリング経験として、抑うつ的な気分と不眠は切り離して考えたほうが不眠に関しては改善されることが多いように感じています。

まずは不眠対策として「太陽光を午前中十分にあびること」をためしてみることはお金もかかりませんので、患者様の貧富の差に関わらずとりくみやすい方法です。しかも、「寝られません」という方のメンタルヘルスの種類に関わらず、カウンセリングした方の不眠解消の切り札になったことが多いのです。より多くの方がこのことを知っていただけたらどんなにいいだろうと思います。

 

最後に、参考までに明るさの基準であるルクスでいろんな場所での明るさの比較をお示しします。いかに室内が屋外に比べて「暗すぎる」かお分かりいただけるのではないでしょうか。自宅の室内にいたのでは、「曇り空」の下の光の100分の1さえも光を享受できないのです。

 

【明るさの比較】

屋外快晴 10万ルクス

屋外曇天 3万ルクス

手術台 2万ルクス

百貨店内・パチンコ店内等非常に明るいと感じる商業施設店内 750ルクス程度

民家室内照明点灯時 200ルクス程度

データ出所:産業総合研究所ならびに蓼科情報株式会社HP(照度計等開発企業)

 

㈱ニッセイ基礎研究所 生活研究部

JADP上級心理カウンセラー 天野 馨南子

眠る赤ちゃん

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