天野理事長ブログ&スケジュール

2015.10.21

「被災時および避難所生活で困る女性ならではの問題」

今回は東京都立墨東病院 女性外来 柴田美奈子先生の寄稿です。

  

9月の大雨、それに続いておきた鬼怒川の堤防決壊により、さまざまな被害に遭われたすべての方々に、心からお悔やみ申し上げます。

 

この災害では、2011年の東日本大震災の時の教訓がずいぶんと活かされ、的確な判断と迅速な対応が、死傷者数をあれ以上増やさなかった事や、その後の被災者への対応に大いに役立ったことを感じている方は多いと思いますが、それでも、実際に被害に遭われた方々の心痛は、察するに余りあるものがあります。

 

今回私は、以前私が勤めていた職場(医療機関)の方を通じ、現在つくば市にお住まいで、この度の鬼怒川氾濫によって被災された方たちが身を寄せる避難所を巡り、そこでさまざまな救援活動をされている女性ドクターから、被災地の「女性」の生の声(本音)を聞くチャンスを得ました。そして経験者でなければわからない避難所での生活の女性ならではの苦労、避難所生活で必要なものは何かなど、非常に現実的なご意見を多く知ることができました。その経験をもとに、自分自身も災害袋に入れるものを少し入れ替えたりしましたので、一部をここにご報告しようと思います。

 

今回の災害は、一部の河川の氾濫にしては被害地域が予想を遥かに上回る広い地域となりましたが、幸い交通手段が確保されたあとは、周辺の市町村からの協力も大きく、行政が調達してくれた救援物資は比較的早く避難所に届けられたようでした。そのため、ごくごく最低限の食料や衣類などに困ることはあまりなかったようです。しかし、たとえば女性の場合、月経中であれば生理用品は必要最低限直ぐになくてはならないものであり、それもただ現物が配布されても、むき出しのままトイレに持って行く事はできないので、化粧ポーチなどがないと非常に扱いに困るわけですが、そういうところまで政府が直ぐに用意してくれる事を期待する事は当然できません。そこで、まずはそういうものを「至急調達してもらいたい(ご寄付願いたい)」と民間の支援団来に求める声が多かったようです。

 

また被災してから数日程度落ち着いてくると、最低限の衛生ケアグッズ(洗顔料や化粧水)も必要となり、特に女性の場合、華美に化粧する必要はなくても、アイブロウ(眉毛を描くもの)がないと、人前に出ることに抵抗があると感じた方は決して少なくなかったようです。またこまめにシャンプー出来ない状況では、せめて寝癖を隠すのにバンダナやカチューシャなどが欲しいといった声も聞こえてきました。

 

新聞や雑誌、テレビ局などの取材が多いなか、「眉毛が点々の顔のまま、寝癖もそのままに写真を撮られて取材を受けることにとてもストレスを感じる」という女性は多かったようです。

 

アイブロウはペンシル型だと鉛筆削りも必要になるので、出来たら繰り出し型のものをお願いしますと言われて、なるほど!と思いました。避難所生活ならではの、でも経験してみないとちょっと気づかないポイントなどもこれを機会に数々知ることとなりました。

 

さらに、意外と重宝されたのが、テレフォンカード。

携帯電話の普及に伴い使用頻度が激減したテレフォンカードも、災害時の場合、行政が避難所に設置してくれた公衆電話から、親戚や知人、また各種相談センターに電話する際に、大活躍だったようです。テレフォンカードの寄付はことのほか喜ばれました。確かに小銭をいちいち入れていたのでは、落ち着いて込み入った話しもできません。女性は「信頼している誰かに話しをする」ことだけでも、心が落ち着き、また頑張る意欲も湧いてくることが多々あります。

 

また、新潟地震や東日本大震災のときにも似たような声を聞きましたが、避難所暮らしは究極の団体生活。ストレスが溜まってくると、とにかく想うのは、少しでも「一人になれる空間」「一人の世界に入れる時間」が欲しいということだそうです。そんな時、お気に入りの本や漫画を読んだり、iPodなどの機器からヘッドフォンをして音楽を聴いたりすることで、一人の空間・一人の世界をどこでも造り出すことが出来るのは、気持ちが辛い時のなによりの慰めになったという声は、今回の災害でも多数聞かれました。

これは女性男性に関わらずかもしれません。

 

災害袋に少し隙間があったら、お気に入りの文庫本を一冊くらいは忍ばせておくのも良いかもしれません。

 

東京都立墨東病院 女性外来

http://bokutoh-hp.metro.tokyo.jp/introduce_part/woman.html

医師 柴田美奈子

自衛隊ヘリ

 

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