天野理事長ブログ&スケジュール

2015.09.25

テストステロンとエストロゲン

天野理事長の寄稿です。

今日は、獨協大学(天野貞祐記念館)で開催された第15回日本Men’s Health医学会-男性健康長寿プロジェクトへ参加しました。

 

今回の学会長は獨協医科大学越谷病院 泌尿器科教授 岡田弘先生。

学会は9月4日(金曜日)、5日(土曜日)の2日間にわたって行われ、第6回テストステロン研究会(会長:徳島大学大学院医歯薬学研究部 生殖・更年期医療学分野 安井俊之教授)との共同開催でした。

私は2日目の日本Men’s Health医学会シンポジウム「女性医学に学ぶメンズヘルスの向上」の座長として参加しました。

 

岡田学会長のご挨拶の言葉によれば、「Men’s Healthに関する関心は年々高まりつつありますが、Women’s Health に比較すると、依然大きな開きがあると感じております。

特に書店などで健康に関する書物や記事を見ると、女性向けの情報量に比較して男性向けのものは圧倒的に少ないことを実感させられます。そこで、学会のメインテーマを「女性に学ぶメンズヘルス」として、「女性医学に学ぶメンズヘルスの向上」をテーマとしたシンポジウムを企画しました」とのことでした。

 

シンポジウムの演者と演題、講演の概略は以下のとおりです。

 

1.メンズヘルスにおけるテストステロンの役割:

辻村晃(順天堂大学医学部附属浦安病院 泌尿器科 先任准教授)

 

男性ホルモンであるテストステロンの低下がもたらす加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)は、うつ・不安などの精神症状、勃起障害をはじめとする性機能障害、内臓脂肪の蓄積など多彩な症状を呈する。それらの症状に対してテストステロン補充療法が有効であるという報告が近年相次いでいる。テストステロンはメンズヘルスの概念において、極めて重要な因子になり得る。

 

2.動脈硬化と性ホルモンの関係:

小川純人(東京大学大学院医学研究科 加齢医学講座 准教授)

 

加齢に伴う動脈硬化の進展は、男性ではほぼ直線的な加齢変化を示すのに対して、女性では閉経に伴って動脈硬化性変化が進行し、動脈硬化性疾患も男性に比し遅れて発症する。

エストロゲンの動脈硬化抑制作用については、かねてより研究が進んでいるが、男性ホルモンについては、近年急速に研究が進められ、テストステロンはNO産生刺激作用を有し、テストステロン濃度と内皮依存性血管拡張反応は正相関を示すことなどがあきらかになっている。

 

 

3.男が生き辛い社会への対応:うつと性差:

石蔵文信(大阪樟蔭女子大学 健康栄養学部 健康栄養学科 教授)

 

テストステロンの主な働きは、筋力と勇気である。

女性の社会進出が進み、男女共同参画の推進で、男性の優位性が崩れ始めてきた。男性更年期外来を受診する患者の約8割は気分・不安障害患者である。

約3割の患者でテストステロンの低下が認められるが、SSRIなどの抗うつ剤とカウンセリングによって病態が改善されるに伴い、テストステロンは増加する。多くの例では、ストレスから視床下部ー脳下垂体ー性腺系の機能が低下したものと考えられる。

 

 

女性は妊娠・出産・育児を任された性として、閉経前にはエストロゲンに大きな恩恵を得ているわけですが、閉経後は男性より低いエストロゲン、テストステロン環境の中で、生き延びなくてはいけません。今回は、閉経以降の女性におけるテストステロンの補充も話題に上がりました。

 

男性・女性双方でテストステロン、エストロゲンがどの様な機序で働いているのか、その全貌が解明され、結果が治療へ還元される時が近づいているように思います。

仲良しカップル

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