2015.09.18
「見分ける」大切さ①
カウンセリングと精神医学はきってもきれない関係です。
こちらの団体の会員の先生方にはとてもお恥ずかしい限りの資格ではありますが、私は産後、2年間かけてのんびりと心理カウンセラーの資格を2つ取得いたしました。
自分が産後の体調不良で精神的にもひどく苦しんだことがきっかけでした。
生まれて初めて産後うつ病で精神科にお世話になり、通院などで沢山の患者さんと接触・対話がありました。
その中で生まれて初めて、「統合失調症」「拒食症」「躁うつ病」などの診断がついている方について身近に知るようになったのです。
お恥ずかしいのですが、「統合失調症」は名前すら知りませんでした。
目にする患者様の光景にはカルチャーショックに近いものがあり、どういった疾患なのか腰を据えて勉強することにしたのですが、勉強が進むうちに、実は身近にいたクラスメイトや近所の方や職場の方が「もしかして・・・では・・・」ということが結構あることに驚きを隠せませんでした。
変人扱いされたり、おかしい人だといわれたり、扱いにくいといわれたり、「うつ病」だといわれたり、そんな方たちの一部です。
それこそカウンセリングに悩んでご家族や本人が訪れるケースにもありそうに感じました。
そこでかねてから取得したいと考えていた心理カウンセラーの取得にむけて真剣にとりくみはじめたのですが、心理カウンセラーの取得のためにやはり最初に勉強するのが「精神医学」でした。
つまり、本来は心理カウンセラーの守備範囲でない依頼者をクライアントとして抱え込んで悪化させたり、間違ったアドバイスをしたりしないために必須の知識ということを知りました。
しかし、精神科医、カウンセラーでなくても精神医学の基礎を知っておけば、どんなに救われる人が多いだろうか、と思いました。
私は育児休業中、職場へのスムースな復帰準備も兼ねて、とある女性外来にてボランティアで診察前の丁寧な問診表作りのお手伝いをしていました。
その中で、ご本人・ご家族はうつ病と信じておられるけれど、お話を伺うととてもそうとは思えないケースが出てきました。
以下に、実例に少しフェイクをかけて御紹介させて頂きます。
遠方からわざわざ親子で「精神科に通院しているが体調不良がよくならない。慢性疲労症候群ではないか。」と来られた方でしたが、うつ病的なつらい症状を訴えるお嬢さんのかたわらでお母様が、
「それはもう家族も大変で。うつ病で仕事を休業してつまらないのとよくならないからうさ晴らししたとかで、いきなりカードで1000万弱の請求が送られてきたのです。なんとか家族がかわりに支払いましたけど、困るので早くよくなってもらわないと。」と話して下さいました。
なるほどと思い、お嬢さんに何に使ったかきくと、欲しいものを買ったり、エステに使ったりしたとのことでした。
散財はうつ病の服薬を開始してからか、ときくとイエス、とのことでした。
このエピソードを遠方の精神科の主治医の先生にお話したのか?とお母様に最後に確認すると、うつ病の話とは関係のない恥ずかしい話なのでしていません、先生は知りません、とおっしゃいました。
調子の悪いエピソードばかり本人は私に話してきたので、主治医の先生に本人がいうはずもありません。
うつ病と思われた方が実は躁うつ病である場合、このようなことが起こります。うつ病の薬で躁転してしまうのです。
実は、私が産後通院していた時に知り合った大企業のサラリーマン男性から似たようなエピソードを聞いていましたので、ピンときたのです。
彼は最初うつ病で入院しましたが、よくなって退院した直後、異常なほど気が大きくなり、友達を何人もよんでホステスさん遊びをして、一晩に200万近く使ってしまいました。
その件で、当然ですが家族とまでも不和になり、次の通院で「躁うつ病」に診断が変更になったとご本人から伺いました。
正確な情報が診察時に医師に伝わらず、本来の疾患と異なる診断で薬が出されていてなかなか治療がうまくいかない、正確な診断が遅れることが多いように思います。
心理カウンセリングなどなおさらです。
その親子には異常な金額の散財のエピソードを、自宅近くの精神科の主治医に必ず伝えるようにお願いをしました。ご本人の苦しみや、お母様のとんでもない気苦労もそれでもしかするとかなり軽減するかもしれませんからとお話しました。
患者様ご本人の訴えを聞くことも大切なのですが、ご家族や第三者の目からの情報で、その人を悩ませているものの真実を「見分ける」作業、本当に大切だと思っています。
㈱ニッセイ基礎研究所 生活研究部研究員
JADPメンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー
天野 馨南子