2015.08.07
日焼け止めの誤解
今回は天野惠子理事長の寄稿です。
メディカルトリビューンに「日焼け止めに対する消費者の理解は依然不十分」という記事が載っていました。
紫外線のうち日焼けと関連しているのは主に紫外線B(UV-B:波長280~315nm)です。
UV-B暴露による日焼け(発赤・炎症)の発現を何倍遅延出来るかを示したのが、SPF(sun protection factor)値。
SPF30の日焼け止めを利用した場合、赤い斑点が現れる時間を30倍に伸ばすことが出来るということになります。具体的に言うと、日焼け止めを使わない時に赤い斑点が現れるまでの時間が、20分程度の人が、SPF30の日焼け止めクリームを使用すると、20×30=600分。約十時間程度の日焼け止め効果が期待できるということです。
現在の日本では、SPFの上限は50+となっています。測定法に限界があるため50以上の数値は信用性が低いということで上限が設定されました。しかし、実際にはSPF30以上の製品の効果には代わりが無いのが実情のようです。
一方、光老化と関連しているのは、主に紫外線A(UV-A:波長315~400nm)で、UVA波の防止効果を表す指標がPA(protection grade of UVA)値です。
SPF が肌が赤くなる原因を防ぐのに対して、PAは皮膚の黒化・しわ・たるみなどが起こる原因を防ぎます。PAは日本化粧品工業で、効果により4段階に分けています。
PA+:PFA2以上4未満・UV-A防御効果がある。
PA++:PFA4以上8未満・UV-A防御効果がかなりある。
PA+++:PFA8以上16未満・UV-A防御効果が非常にある。
PA++++:PFA16以上:UV-A防御効果が極めて高い
いずれの紫外線も皮膚がんの危険因子であり、米国食品医薬品局は、2011年に紫外線AとBの両方の防御成分を含む場合に「broad spectrum」と表示することを義務付けました。
SPF値15以上でbroad spectrumと表示された製品を用い、他の紫外線対策も適切に行わなければ、日焼けと光老化、皮膚がんの全てに対する予防効果は無いのです。
ところが、米国Northwestern University Feinberg School of Medicine のRoopalV. Kundu氏らが、前年に日焼け止めを購入した93例で、日焼け止め製品選択に関する調査したところ(JAMADermatol2015年6月17日オンライン版)、日焼け止めに対する消費者の理解は、いまだ不十分でした。
皮膚がん予防には、“日焼け止め”を用いるより、日光を避けるほうが効果的であることは、ほとんどの人(81.6%)が理解していたのですが、日焼け止め製品選択の決め手は、1位がSPF値の高さ(49,1%)、2位が敏感肌向けの成分配合(43.0%)、3位が水や汗に強い製品(43.0%)で、broad spectrum表示の製品を選んだ人は34.2%に過ぎませんでした。
また、SPF値およびbroad spectrum表示との関連で、それぞれの害の防御効果を正しく理解していた人は、皮膚がん37.7%、光老化7%、日焼け22.8%と、いずれも半数に満たず、SPF値の定義を正しく理解していた人も43%に過ぎなかったと報告されています。
実は、わたくしもSPF値、PA値の定義をよく知りませんでした。改めて勉強させてもらいました。