2015.08.13
リノール酸とは
今回は天野惠子理事長の執筆です。
6月2日のコラムに田中裕幸先生が、7月16日コラムには私が、リノール酸の摂りすぎはどうも健康を害するらしいと書きました。
健康診断で「貴女は中性脂肪が高いね」といわれた方はいませんか?中性脂肪が分解されると脂肪酸とグリセロールに分かれます。グリセロールとは、グリセリンのことです。
脂肪酸は、炭素が連なった構造をしていて、その中の2重結合の数で、二重結合の無い飽和脂肪酸、一つだけ二重結合がある一価不飽和脂肪酸、二つ以上二重結合がある多価不飽和脂肪酸の3種類に分類されます。
一価不飽和脂肪酸の代表はオリーブオイルです。
多価不飽和脂肪酸としては、ω-6脂肪酸のリノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸、ω-3脂肪酸のα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)などが代表的です。このうち、ω-6脂肪酸もω-3脂肪酸も人体では合成できませんので、食事から摂取する必要があります。多価不飽和脂肪酸で植物油に多く見られるのはω-6脂肪酸のリノール酸で、一部の植物油にはω-3脂肪酸のα-リノレン酸も見られます。植物油は多価不飽和脂肪酸の代表的な摂取源です。
一時期、リノール酸にコレステロールを下げる作用があるといわれ、動脈硬化を予防するには、植物油を十分に摂るのがよいといわれました。
ところが、最近ではリノール酸のコレステロール低下作用はそれほど持続性のあるものではないといわれています。また、摂取されたリノール酸は体内でアラキドン酸に変換され、さらに多くのホルモン様物質が作られます。
たとえば、トロンボキサンA2という物質は血小板を固まりやすくして血管を収縮させ、高血圧、狭心症、心筋梗塞、不整脈、脳梗塞の原因となります。
その他にも、リノール酸はアレルギー疾患や炎症に深く関わっています。
体内にダニやホコリなどのアレルゲンが侵入すると、それを排除するためにアラキドン酸からロイコトリエン、トロンボキサンなどの炎症メディエーターという化学伝達物質が産生されます。リノール酸系列から作られたこれらの物質の働きは非常に強力で、アレルゲンが排除された後も体内に居残って活動し続けることがあり、この「居残り活動が」過剰な防衛反応としてアレルギー疾患の原因となっているのです。
また、リノール酸を多く摂取すると体内でアラキドン酸が飽和状態となり、プロスタグランジンE2という物質が産生過剰になり、この物質が発ガンを促進すると考えられています
リノール酸は日常食べる食品の中に十分に含まれており、あえて積極的に摂る必要はありません。