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2015.07.09

「女性の心疾患の兆候を見逃さないために」

今回は、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学 嘉川亜希子先生の寄稿です。

 

日本人女性は世界で最も虚血性心疾患死亡率の低いことで有名であり、一時香港にその座を譲ったが、この四半世紀は世界長寿第一位をkeepしてきた。

 

となると皆さんは「女性の心疾患の兆候を見逃さないために」というタイトルにあまり興味を感じないかもしれない。

 

しかし、

 

・「虚血性心疾患は男性の病気」という従来の認識

・女性の非典型的な症状から心筋梗塞が疑われない

・閉経前には冠危険因子(★1)を認めなかったので閉経後も低リスクが続いていると考える

 

等の誤った認識等が関与するためか、女性は心筋梗塞の発症から病院受診・治療を受けるまでの時間が男性よりも遅延し、急性期死亡率も男性より高いといった状況が存在している。

 

罹患率が男性よりも低くとも、女性の心疾患の兆候は決して見逃されるべきではない。

 

 以前から救急外来や病棟のベッドサイドで、先輩医師から後輩医師へ、女性の心疾患の特徴について様々な教えがなされてきた。

循環器領域における性差医療の研究が進むにつれ、それらはただの印象なのではなかったというevidenceが証明されてきている。

 

●「高齢女性の初発の急性心筋梗塞は急変することがあるから要注意」という教えは、「心筋梗塞に合併した心臓破裂は高齢女性の初発の急性心筋梗塞に多く認められる」ということに関連し、

●「冠動脈造影で有意狭窄を認めないのに、しつこく胸痛を訴えるのは女性に多い」については「表在冠動脈には有意狭窄を認めない微小血管狭心症は女性に多い」ことがわかってきており、

●「心エコーでの左室収縮能は正常なのに、その他の所見は心不全だという高齢女性がいる」のは「女性の心不全は左室収縮能は正常に保たれ、拡張障害が主な病態であることが多い」からであり、

●「ストレスで心臓発作を起こすのは女性に多い」という印象も「たこつぼ心筋症は閉経後女性に多く認められる」ことで正しいことが証明されている。

 

 日本循環器学会は2010年に「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」を発表した。日常の循環器診療において、頭に片隅に入れておけば「女性の心疾患の兆候を見逃さない」ことに役立つ情報がまとまっているので、ぜひ皆様にもご一読されることをおすすめする。

  

(編者注)★1 冠危険因子(かんきけんいんし)

虚血性心疾患を起こしやすい危険因子のこと

1.高血圧、2.高コレステロール血症、3.喫煙、4.糖尿病、5.高尿酸血症

6.年齢(老化)、7.家族歴、8.肥満、9.ストレス、A型性格(「◆性格」)

10.運動不足、 11.男性

 

 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学 嘉川亜希子

http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~intmed1/staff/details/yoshikawa.html

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