天野理事長ブログ&スケジュール

2015.07.16

コレステロール摂取上限基準の削除

今回は天野理事長のコレステロールに関する寄稿です。

2013年11月の米国心臓病学会/米国心臓協会による「心血管疾患リスク低減のための生活習慣マネジメントのガイドライン」、2015年2月の米保健福祉省と米国農務省による2015年米国民食事ガイドラインに関する諮問委員会の報告書、2015年3月の「2015年日本人の食事摂取基準」がそれぞれ「コレステロール摂取制限を設けない」と発表しました。

 

厚労省は、これまで、18歳以上の男性は1日当たり750mg未満、女性は600mg未満の摂取基準を設けていましたが、今回、5年おきに改定する「食事摂取基準」の2015年版では、「コレステロールの摂取量は低めに抑えることが好ましいものと考えられるものの、目標量を算定するのに十分な科学的根拠が得られなかった」として、上限基準を削除しました。

いずれの指針も、健康に問題のない人を対象としています。

 

コレステロールは細胞膜の構成成分で、性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモンやビタミンDの前駆物質ともなります。体にとってなくてはならないものです。

しかし、つい最近まで、コレステロールは動脈硬化をもたらすものとして、閉経によりコレステロールが急上昇した女性に対して、コレステロール低下剤が強力に処方され、筋肉痛などの副作用に悩んでおられる方も多く見受けました。

 

2012年に、動脈硬化性疾患予防ガイドライン(日本動脈硬化学会編)第4章「動脈硬化性疾患の絶対リスクと脂質管理目標」の中で、冠動脈疾患絶対リスク評価チャート(一次予防)による、絶対リスクに基づくLDL-コレステロール管理目標の設定が推奨されました。

性別、年齢、高血圧、喫煙、糖尿病の有無を勘案して脂質管理をすることがしっかりと明記されました。

それ以降、閉経後LDL-コレステロールが高いというだけで、コレステロール低下剤が処方される女性は少なくなっているように思います。

 

よく、「コレステロールが高いので、卵、いくら、うに、イカなどは控えるように」と指導されることが多いのですが、コレステロールは食事で摂った分だけ血液中に増えるわけではありません。

コレステロールは大半が肝臓で合成され、食事からは20~30%ほどです。食事から摂りすぎた場合は、体内でのコレステロール合成にブレーキがかかり、過剰にならないようにコントロールされているのです。

 

また、臨床研究からは、食事によるコレステロール低下療法が、高コレステロール血症患者の心筋梗塞の罹患を予防するかどうかは明らかでありません。

 

一方で、多くの研究が、LDLコレステロール高値が動脈硬化症の原因の一つであり、血中LDLコレステロールを一定の範囲にしておくことが重要であると報告しているのも事実です。

2015年6月2日に、コラムを担当された田中裕幸先生は、ご自分の研究から、

①LDLコレステロールと正相関するのはリノール酸である。

②LDLコレステロールが高い人のリノール酸は高い。

③頸動脈エコーの所見からは、リノール酸の方がLDLコレステロールより頸動脈球部のプラーク形成と関係する。

ことを確認され、「コレステロールは気にせず食べて、リノール酸摂取は抑制を!!」といわれています。

リノール酸は、体内で他の脂肪酸から合成できない必須脂肪酸で、必要なことには変わりはありませんが、リノール酸の摂取を抑制することによって、LDLコレステロールを抑えようという考えです。

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