2015.07.24
月経前症候群を知らない女性たち①
知人ママの一人に、あるとき 「私は性格が不安定なんです。いつもではなくて時々とんでもない状態になるの。なんのメンタルかしら?」
と相談を受けました。
知人ママの一人に、あるとき「私は性格が不安定なんです。いつもではなくて時々とんでもない状態になるの。なんのメンタルかしら?」と相談を受けました。
2児のお母さんで、からっとした性格。さばさばとしていて、学歴も高い専業主婦の女性です。あまりにも意外な相談内容に驚きを隠せませんでした。
不安定とは、一体どのようになるのか詳しく話を聞くと、
・突然「消えたい」と思い、何もすることが出来なくなり、布団に引きこもりになることが1週間続く。
・その間はキッチンのシンクには洗い物が溜まり、使える食器が食器棚にひとつもなくなってしまう。
・その間は小学生の子ども2人と多忙な夫でなんとか家のことを回すような状態。
・しかしその1週間が過ぎるといきなりやる気が出て、普段の生活に戻る。
・その症状がない期間は生活に何も支障はない。
・派遣やパートやバイトなど自分の過去の職歴を活かした仕事を主婦の傍らやってみたいのに、この1週間があるから怖くて応募できないでいる。
・こんな自分は性格異常なのかと心配になる。
こんなお話をされました。
私は月経前症候群(PMS)をもっており、生理の前から後にかけて頭痛や吐き気、眠気に困るためPMSの知識がありました。PMSでうつ症状や逆に躁状態になる女性がいることも知っていました。
そこで、「それって生理前におこりませんか?」とうかがったのです。
彼女はしばらく考えて、あっといいました。
生理不順の方で、ない時は2ヶ月もないなど次回の生理がよめずに気がつかなかったが、思い出してみたらいつも生理前に起こる、とおっしゃいました。
私はなるほど、と思い、「それ、メンタルじゃないですよ。月経前症候群といって生理前におこる不調の一つですよ。女性ホルモンを整える治療をすればきっと改善されるはずです。今は超低容量ピルといって、PMS改善のために女性ホルモンをととのえるためのピルもあるんですよ。」
とお伝えし、会員である性差医療情報ネットワークのマップにも登録されている女性外来を御紹介しました。そして医師のすすめで彼女は超低容量ピルの使用を開始しました。
しばらくして彼女から「嘘のように何もおこらなくなった。バイトをはじめてみようと思う。長年、人には言えない悩みだったの。主人にはいつも心配をかけていたの。本当に感謝しています。」とのご連絡を頂きました。
こういう女性が不調の時に精神科にかかってしまうと、適切な治療がなされないことがあるかもしれない、私はその時に不安に感じました。
社会に出て働く女性が増えてきた今、もっとPMSのことが女性達にもっと周知されることを願うばかりです。
㈱ニッセイ基礎研究所 生活研究部
JADP上級心理カウンセラー 天野 馨南子