2015.06.25
不妊治療成功率の「現実」
最近は卵子の老化が広く知られるようになり、年齢が上がると妊娠が難しくなることを意識する女性が増えました。
最近は卵子の老化が広く知られるようになり、年齢が上がると妊娠が難しくなることを意識する女性が増えました。
しかし、自然妊娠がダメでも「不妊治療があるじゃない?」という考えは漠然と持っている女性が多いように思います。はたしてそれは本当にそうなのでしょうか?
不妊治療は、確かに「卵子と精子の出会い」の「お見合い活動」はしてくれます。
けれども残念ながら、卵子の若さを取り戻してくれる治療ではないので、老化した卵子が受精し、そして胎児に成長して出産にいたるには、卵子がすでにその力を失ってしまっていて望む出産には至らない、そんな確率が加齢とともに急上昇するのは自然妊娠と全く同じなのです。
日本において不妊治療がどのくらい成功しているのか、年齢別に見てみましょう。
以下は日本産科婦人科学会が発表した、2012年の不妊治療の「生産率」、つまり「生きて子どもが生まれる確率」です。
治療回数に対しての成功率を表しています。
2012年 不妊治療生産率
25歳 20.1% 30歳 21.8% 35歳 17.3% 40歳 8.1% 43歳 2.4% 45歳 0.7%
どうでしょうか。
不妊治療がいかに「神の手」ではないか、わかって頂けたでしょうか。
40歳にもなると成功率は1割を切ってしまいます。つまり不妊治療を10回受けても、成功しないことが普通なのです。
10回とは、生理周期にあわせて受精卵を戻すため、最低でも10ヶ月はかかります。
ホルモン治療で体調を崩し、ストレートに毎周期治療を受けられるわけでもありません。
また何よりも費用の壁が高く、1回30万円から50万円(自由診療ですので価格設定はクリニックや病院側の自由)にものぼります。
300万円から500万円かけても、成功しないかもしれないことを覚悟して、そして長い時間、採卵や着床維持のためのホルモン治療に女性の身体が耐えなければいけないことを推奨する社会。
そんな社会は女性にとって望ましい社会とはいえない、そう思うのは私だけでしょうか。
㈱ニッセイ基礎研究所 生活研究部 天野 馨南子
http://www.nli-research.co.jp/company/lifedesign/kanako_amano.html