天野理事長ブログ&スケジュール

2015.04.21

知って便利な漢方薬「頭痛の漢方」

今回から、知っていて便利な漢方薬をいくつかご紹介したいと思います。

外来で「漢方薬を出しましょうか?」といいますと、多くの患者さんが「漢方薬は長く飲まないと効果が分からないのですよね」といわれます。

そのようなイメージの強い漢方薬ですが、実は、西洋薬にないよさを持ったすぐ効く漢方薬もあり、知っておくととても便利です。

 

私が女性外来で患者さんにお出しして喜ばれる漢方ベスト20には、

 

加味逍遥散(カミショウヨウサン)、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)、

当帰四逆加五茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュショウキョウトウ)、

芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)、香蘇散(コウソサン)、五茱萸湯(ゴシュユトウ)、

釣藤散(チョウトウサン)、五苓散(ゴレイサン)、苓桂朮甘湯(リュウケイジュツカントウ)、抑肝散(ヨクカンサン)、桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)、

六君子湯(リックンシトウ)、安中散(アンチュウサン)、真武湯(シンブトウ)、

八味地黄丸(ハチミジヨウガン)、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、葛根湯(カッコントウ)、小青竜湯(ショウセイリュウトウ)

 

などがありますが、虚実や陰陽という難しいことを考えずに、ほとんどの女性に使えます(慢性疲労症候群の方や、術後やがん・難病で極めて体力のなくなった方を除く)。

 

私が自分自身に最初に使用したのが、当帰四逆加五茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュショウキョウトウ)でした。

更年期に極めて強い冷えと疲労感に襲われた私が、唯一効果があると感じた治療は入浴・温泉でした。体を温めることが治療だと感じた私が選んだのが当帰四逆加五茱萸生姜湯。

服用後2時間ぐらいは体が温まり、少しは楽でしたので、日に3回服用しながら、2時間ごとに15分ほど横になるというやり方で、約4年間を過ごしました。

 

2001年に千葉県立東金病院で女性外来を立ち上げてからは、多愁訴(多彩な症状を訴える)の更年期女性への対処には、カウンセリングと漢方が極めて重要であると確信し、漢方の勉強を始め、患者さんにも積極的に使用してきました。

 

最初にびっくりしたのが頭痛にたいする五茱萸湯(ゴシュユトウ)の効果です。

2013年に日本頭痛学会から頭痛ガイドライン2013年が出されましたが、その中でも症例集積研究以上のエビデンスをもつ頭痛に対する漢方薬(★1)として、

五茱萸湯(ゴシュユトウ)、桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)、釣藤散(チョウトウサン)、葛根湯(カッコントウ)、五苓散(ゴレイサン)が取り上げられています。

中でも、五茱萸湯(ゴシュユトウ)はレスポンダー限定(五茱萸湯が効くと思われる証=体質の患者)二重盲検ランダム化比較試験(★2)が行われており、推奨度B(行うよう勧められる)になっています。

 

五茱萸湯(ゴシュユトウ)は漢方の適応としては、一次性頭痛(★3)の中でも、主に偏頭痛に用いられることが多く、頭痛頻度が高く、鎮痛薬や予防薬の効果も乏しい場合や、鎮痛薬は有効であるが、胃の痛みなどの副作用が出て服用しにくい場合に、処方されます。

また、偏頭痛は女性に多いため、冷えやむくみが出やすい体質や、月経関連頭痛、更年期に伴う頭痛などに用いられます。緊張型頭痛や、二次性頭痛の薬物乱用頭痛精神疾患(★4)による頭痛や神経痛も適応となります。

 

漢方薬は伝統医学をもとに、経験的に使用されてきた治療薬ですが、近年では徐々に科学的エビデンス(★5)も集積されつつあり、頭痛治療に対する有効性を裏付けています。

しかし、研究のほとんどが症例集積(症例を集め、報告する)研究にとどまっています。その理由の1つとしては、漢方薬の処方体系である「同病名でも体質により薬が異なる」という点が研究の発展に歯止めをかけていると考えられ、今後、漢方処方体系に則した研究デザインの作成が望まれるところです。

編者注

★1 「明らかに頭痛に効果があると認められる漢方薬」と一般の方はお読み下さい。

★2 医師にも患者にも何の目的でどのような薬を使用しての実験か、一切知らせず行う効果測定実験。

★3 別の疾患が原因となっていない頭痛

★4 もともと何らかの頭痛がある人で、頭痛薬の飲み過ぎによりかえって頭痛が悪化した状態を「薬物乱用頭痛」という。鎮痛薬などの薬の過剰服用が引き金となり、痛みに対する感受性が過敏になってしまうことが原因と考えられている。

★5 検証結果・臨床結果

にんじん

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