天野理事長ブログ&スケジュール

2015.04.06

桃仁と漢方薬

桃はおいしく食べて、しかも種や花、葉まで漢方薬として使うことができます。

桃はおいしく食べて、しかも種や花、葉まで漢方薬として使うことができます。

 

桃の種を割ると、中から更にいくつかの種が出てきます。出てきたこれらの種子を日干しにしたものが桃仁(とうにん)です。脂肪油、青酸配糖体のアミグダリン、たんぱく質、酵素のエムルシンなどの成分を含んでいて、漢方薬としてよく知られています。

 

薬理作用としては、抗炎症作用、血液凝固抑制作用、抗アレルギー作用、鎮痛、抗活性酸素作用、子宮収縮作用などがあり、女性医療の三大処方(当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸)の一つ、桂枝茯苓丸に含まれています。

 

桂枝茯苓丸は、月経困難症、子宮内膜症、子宮筋腫、月経不順、冷え性、更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こりなど)、帯下などの女性特有の症状・疾患に有効なばかりでなく、痔や打撲傷など瘀血(血の滞り)と考えられる病態にも有効です。

その他、エキス剤では、大黄牡丹皮湯、潤腸湯、疎経活血湯、桃核承気湯、桂枝茯苓丸加薏苡仁に桃仁が含まれています。

 

大黄牡丹皮湯は、もともとは虫垂炎の処方でしたが、今は体力があり、便秘傾向と瘀血のある人に用います。月経不順、月経困難、便秘、痔が保健適応になっています。

潤腸湯は、高齢者や体力のやや低下した人の常習便秘に使います。普通の下剤では下痢になる人に向いています。

 

疎経活血湯は、冷えや飲酒によって増悪する関節痛、腰痛、神経痛、筋肉痛の薬です。特に腰から下の症状に有効です。

 

桃核承気湯は、桂枝茯苓丸とならんで、女性外来では患者さんにとても喜ばれる処方です。便秘にとても有効な為です。女性は月経の開始とともに黄体ホルモンの影響で便秘がちになります。月経前緊張症と言う病名をご存知ですか?月経前に心身ともに体調が崩れ、時には欝っぽくなったり、涙もろくなったり、そうかと思うといらいら感が強く、狂ったようになるなど、大変な思いをするのですが、月経の到来とともにケロリと治ります。

この月経緊張症の症状の中で、いらいら感が強く、狂ったようになる、月経前に甘いものが食べたくなる、便秘がひどい、お腹から何かが突き上げてくるような感じがするなどの症状に用います。また、瘀血の薬として、月経不順、月経困難症、産後の精神不安、痔などにも使いますし、時には高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)や腰痛にも使います。

 

桂枝茯苓丸加薏苡仁は、桂枝茯苓丸の証(のぼせ、肩こり、頭痛、足の冷え、下腹のいたみなど)に加え、にきび、しみ、手足のあれなどの皮膚症状があるときに用います。

 

桃仁を含む漢方薬は、妊婦では、流早産を起こす危険性がありますので、妊婦では禁忌です。

桃の木

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