2015.06.02
コレステロール摂取の議論よりリノール酸摂取の抑制を
今回の投稿は医療法人ニコークリニック 院長 田中裕幸先生です。
“コレステロール: 「気にせず食べて」 動脈硬化学会が声明”
これは2015年5月2日にネット上に掲載された毎日新聞の記事の見出しです。
コレステロール摂取と血清コレステロールの関係については、体内で合成されるコレステロールが摂取量より多いため、必ずしも摂取とは関係しないと考えられてきました。
また血糖測定とは大きく違い、一言でコレステロールといっても実際に測定しているのは「リポ蛋白」です。
「リポ蛋白」とは、アポ蛋白、リン脂質(グリセロールにリン酸基と脂肪酸)、トリグリセライド、コレステロール・エステル(コレステロールと脂肪酸)と遊離コレステロールなどの複合体です。
このリポ蛋白は肝臓で作られ、VLDLの形で血中に放出され、その後、トリグリセライドを減らしてLDLコレステロールに変化していきますが、注目はリポ蛋白の脂肪酸です。
リン脂質とコレステロール・エステルの脂肪酸はリノール酸やアラキドン酸などのn-6系不飽和脂肪酸とEPAやDHAなどのn-3系不飽和脂肪酸です。
つまり、細胞膜の成分となるコレステロールと多価不飽和脂肪酸がリポ蛋白の形で運ばれているのです。
さて、私はこれまで血清脂肪酸とリポ蛋白の関係について調べてきました。
その結果、LDLコレステロールと正相関するのはリノール酸であることがわかりました。つまりLDLコレステロールが高い人のリノール酸は高いのです。
ここでポイントはリノール酸などの多価不飽和脂肪酸は、「体内で作れない」必須脂肪酸であることです。ということは、LDLコレステロールが高くなるのは肝臓でリポ蛋白が作られる際にリノール酸が多ければコレステロール・エステルも増加するため、と考えられます。
また頸動脈エコーを活用したところ、リノール酸の方がLDLコレステロールより頸動脈球部のプラーク形成と関係することもわかりました。
そこでNAHWから“コレステロールは気にせず食べて、リノール酸摂取は抑制を”という声明を出していただけると嬉しいのですが・・
医療法人ニコークリニック 院長 田中裕幸