女性外来の診察室から

第87回 ドック・健診と予防医療 将来の展望 ~デジタルツイン~

9月のはじめに第63回人間ドック学会が千葉で開催され、3年ぶりの現地開催(オンデマンドとのハイブリットですが)となり、現地参加してきました。

人間ドックの学会としては初めて女性の健診について多く取り上げられ、天野先生と小西先生が座長をされた“生活習慣病の性差と予防”をはじめ、女性の健康関連のセッションが数多く行われていました。
女性の健康関連のトピックスは小西先生が取り上げてくださるとのことでしたので、私の方はそれ以外の興味深かった内容について、こちらに書かせていただくことにいたします。

デジタルツイン

ドックに携わり、10年以上になりますが、最近はAIや新たな健診のツールが出てきており、従来の健診項目以外に何を取り入れるとより健康の維持に役立つのかを日々考えています。
少し前より、遺伝子解析について興味を持つようになり、健診項目として遺伝子ドックなるものが行われる施設もでてきています。2年前に学会の主催する遺伝学的検査アドバイザーなるものも取得し、今回更新のために受講をしました。その中でインパクトのあったものが“デジタルツイン”です。

デジタルツインは数か月前にBBCでも取り上げられ、
(https://www.bbc.com/news/business-61742884 )
イギリスでは2030年までの実現を目標としているとのことです。

デジタルツインという言葉自体は医療よりも他業種で応用が始まっている先進技術で、現実世界の物体や環境から収集したデータを使い、仮想空間上に全く同じ環境をあたかも双子のように再現するテクノロジーのことですが、健康管理にもこのデジタルツイン構想が進行中であることに、私は衝撃を受けました。

医療界におけるデジタルツインとは、
現実空間にあるもの(採血、画像を含めた健診結果、ここに、例えば、遺伝子情報も加わります。および個人のデータ:IoTによる運動量や睡眠などのデータ及び生活習慣)をサイバー空間に写像し、サイバー空間でシュミレーションを行い、フィードバックをして、現実空間とサイバー空間の高度な融合を行うことにより、自分の写像であるデジタルツインが、私たちに健康上のアドバイスをするというものです。

例えば、毎晩、飲んでいる状況の数日後、朝起きると、デジタルツインが、”このままの生活を続けると、脳卒中を起こす可能性が○○%だよ” などと言われたら、ちょっと生活習慣を改めて、今日は飲みに行くのをやめて、早く帰ろう。と行動修正をしたりするわけです。

もちろん、自分自身のデータや、自分の睡眠や脈拍、血圧などの身体データを見ながら、自分の健康状態を把握して、行動修正することは、健康に注意を払われている方ならできることでしょうが、多くのデータから解析され、新たな情報が常にupdateされて、自分の健康管理に役立つのならとても斬新だと感じました。

人生100年時代と言われるようになって、久しいと思いますが、いかに健康に過ごすか、健康寿命をいかに長く保つかが重要だと思います。
自分の健康を意識するのはわかっていても、日常の多忙な状況では、ついおろそかにしがちだと思います。DX技術がそれをサポートしてくれる、ということですね。

そのほか、御多分に漏れず、AIホスピタルやパーソナルヘルスレコード(PHR)の話題も多い学会でした。

健診を行う立場からは、質の高い健診で、受診者の方に健康を享受してもらうこと、アドバイスによって、より健康寿命を延ばせる提案をしていきたいと、これからも情報収集・知識のupdateをしていこうと再確認した学会でした。

虎の門病院付属健康管理センター 大本由樹

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