女性外来の診察室から

No.37 当院女性外来を振り返って(高知いちょう医院)

高知いちょう医院院長 高橋亜佐子先生の投稿です。

 

今回天野恵子先生より『女性外来の診察室から』への原稿のお声がけを頂いた事をきっかけに、高知いちょう医院の女性外来について振り返ってみました。

 

平成11年、夫と共に、老朽化し慢性疾患のための病院となっていた父の「高知外科胃腸病院」の全面リニューアルを行いました。

 

リニューアルに際し、内視鏡を専門とする消化器内科医として胃・大腸内視鏡検査を苦痛なく、快適な環境で行いたい、そして特に全くなされていなかった女性への配慮を最大限に行いたいと考えました。

そこで生まれた理念の一つが「女性にやさしい医療」でした。

 

施設面だけでなく、もっと診療面での方針を形にして外へ示したい、更に女性が安心して受診できるように、便秘や痔についても気軽に相談できるようにしたい、との思いから火曜日午後に開設したのが女性専用外来でした。

リニューアルから1年半たった平成1212月でした。

 

玄関に案内板を出し、1階の外来フロアは女性のみとし、男性で来られた方は2階へご案内し、待合室には紅茶やハーブティー、便秘対策として食物繊維入りクッキーを用意するなど環境にも配慮を行っていました。

 

その頃、私自身は性差医療についての知識は全くありませんでした。

平成14年医学雑誌で千葉県衛生研究所所長の天野恵子先生の性差医療の記事に非常に興味を持ったことを記憶しています。そして152月、ある医療経営研究会より女性外来セミナーの講師依頼がきたのです。

分不相応と思いつつお引き受けしたのは、もう1人の講師が天野恵子先生だったからでした。

この運命の出会いによって私は性差医療・漢方治療へ導かれました。本当に有り難いことで、天野先生との出会いがなければ女性外来は続いていなかったかもしれません。

 

その後16年間女性外来をやってきて、本当に女性外来によって医師として成長させてもらったと実感しています。

 

当院の女性外来は

①更年期

②自律神経・メンタル

③便秘

④痔・肛門

の患者さんが中心です。

 

数年前までは不定愁訴を訴える患者さんに、自分自身が消耗してしまい、正直、女性外来は気合いが必要で楽しくはありませんでした。

いつも思い出されるのは「医者は治してなんぼ」という天野先生の言葉でした。

女性外来の仲間の先生方と漢方を学ばせてもらったり、医療とは無関係の「聞く」ことをとことん学んだりしました。

 

そして今、患者さんの人生の伴走をさせていただける女性外来は、医師としてのやりがい、喜びとなっています。

 

 

私個人の女性外来について徒然なるままにただ振り返ってしまいました。 

最後に最近印象に残っている患者さんについてご紹介させていただきます。

 

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〈症例〉

 

25歳女性。医学部6年生休学中。主訴は便秘。

 

「中2の頃から学校の教室内で後ろに人がいると排ガスの頻度が増えた。

高校・大学に入ってもその症状が続いている。

実習中に倒れたりもしており、大学では心療内科にもかかり双極性障害としてカウンセリングを受けている。

 

2の時、後ろの人に「臭い」と言われたトラウマがあったが、検査で便の貯留があり、排便コントロールが良好なら臭いは無いと説明し、大建中湯中心に治療を開始。

排便のコントロールを行いながら、背景にあった両親とも医師であり、特に母親との関係も含め、気長にカウンセリングを継続。

迷走神経反射は苓桂朮甘湯で消失。

 

5ヶ月間5回にわたる卒試を受け、今春国試もパスし医師となった。

女性外来受診から1年半。卒業式のため長野から駆けつけた御両親の涙と笑顔が印象的だった。

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ふり返ってみて、改めて天野恵子先生に感謝申し上げると共に、これからも女性外来と共に医師として成長していく思いを新たとしました。

 

高知いちょう医院 院長 高橋亜佐子

http://www.e-kochiichou.com/index.html

卒業おめでとう

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