女性外来の診察室から

No.21 40代女性の虚血性疾患(鹿児島大学病院)

鹿児島大学病院 女性専用外来(心臓血管・高血圧内科) 嘉川亜希子先生の執筆です。

 

Kさんは44才。

私の勤務する病院で、3年前から看護助手さんをされています。

 

43才の時2-3ヶ月高血圧内服治療されていましたが、減塩食で改善したため内服中止。

もともと副鼻腔炎があって頭痛持ちという以外は糖尿病や脂質異常症認めず、肥満や喫煙もなく、仕事に子育てに忙しい日々を送っていました。

 

ある日、昼の休憩時間に、朝から喉と両肩にかけての締め付ける感じがすると相談してこられました。

 

我慢できない症状ではないため午前中はいつも通りに仕事をこなしていましたし、閉経前の若い女性で軽度高血圧の治療歴がある他は冠動脈危険因子も認めず、たいしたことはないだろうと思いながらも念のため心電図をとってみました。

すると、胸部誘導でT波の増高認めました。

まさかねと思いながら心筋梗塞マーカーである心筋トロポニンTを測定すると陽性であったため、循環器専門病院へ救急搬送し、夕方緊急冠動脈造影検査が行われました。結果、冠動脈の枝の一本が抹消のところで99%狭くなっていました。

血管が小さく、支配領域も狭いため内服で治療され、一週間で退院し、すぐに仕事復帰されました。

 

若い女性で目立ったリスクファクターもないのに心筋梗塞とは珍しいねと医局でも話題になった一ヶ月後、Iさん43才が土曜日の夕方に外来受診されました。

 

木曜日の夜中背中が痛くて眠れず、金曜日も一日中背部痛、全身倦怠感があったが仕事があったので病院受診ができず、仕事が休みの土曜の午後に受診したとのことでした。

 

ご自分でもたいした病気とは考えなかったため、受診後はお子さんのサッカー教室に付き添う準備をしての受診でした。

 

高血圧なし、脂質異常なし、糖尿病なし、喫煙なし、家族歴なし。そして閉経前。整形外科的な痛みかなと思いましたが、最初に心電図をとりました。すると心筋梗塞で認める異常Q波を認め、心筋トロポニンTも陽性でした。

木曜日発症の心筋梗塞を疑い、お子さんのサッカー練習付き添いは取りやめてもらい、循環器専門病院へ救急搬送しました。

冠動脈造影検査で、左前下降枝75%狭窄に攣縮を合併し心筋梗塞を起こしていたと診断されました。

 

KさんもIさんも典型的な前胸部痛ではなく、喉や両肩、背中の痛みを訴えられており、心電図検査をしなければ心筋梗塞の診断が見逃されていた可能性がありました。

 

「女性の虚血性心疾患は典型的な胸痛ではなく多彩な症状を訴える」ということをもっと啓蒙していかなければと再度強く思わせてくれた症例でした。

 

 

鹿児島大学病院

女性専用外来(心臓血管・高血圧内科) 医師 嘉川亜希子

http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~intmed1/staff/details/yoshikawa.html

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