女性外来の診察室から

No.19 福島県立医科大 性差医療センターの取組

今回は福島県立医科大学附属病院 性差医療センター部長小宮ひろみ先生による執筆です。

 

-福島県における性差医療の普及・定着をめざして-

 

福島県立医科大学付属病院性差医療センターは平成16年女性専門外来として設置され、平成20年12月にセンター化されました。

現在、婦人科、乳腺外科、心身医療科、内科、歯科口腔外科の診療科をもちます。設置当時は、「性差医療」とは何か、また、「性差医療センター」とは何をするところなのかということが、全く周囲に理解されないままスタートしました。確かに、今思えば大胆なネーミングであったと思います。「性差医療」を知ってほしい、また機会があれば「男性外来」も併設したいと考え、周囲の不安な視線を感じながら名称を決定いたしました。開設時、①女性専門外来(将来的には男性外来の設置) ②性差に基づく健康支援 ③性差医療についての地域啓発活動 ④性差医療・医学教育、研究という4本の柱をたてました。以下に現況を記します。

 

①    女性専門外来

週5日間を婦人科医(2名)、乳腺外科(2名)、心身医療科(2名)、内科(2名)、歯科口腔外科(1名)の女性医師が担当しております。カウンセリング(自費診療 5000円)から開始し、初診、再診の流れとなります。センター内あるいは大学病院内での連携はよく、器質的疾患を見逃さないこと、傾聴すること(Narrative based medicine)を肝に銘じ診療しております。私自身は産婦人科医で女性医療を行ってきたのですが、ライフステージと性差を意識して外来診療を行うことにより、女性診療の幅を拡げることができたのではないかと思っています。

 

②    性差に基づく健康支援

平成23年3月11日未曾有の東日本大震災がおきました。福島県は、地震、津波、原発事故、風評と4大災害と窮地に立たされました。当センターでは、震災直後の電話相談、「こころのケア」チームのいわき市支援に同行し女性の健康相談を行いました。この時強く感じたのは、震災直後から女性特有の健康支援が必要なことでした。堂本暁子先生、天野惠子先生と一緒にさせていただいたアンケート調査の結果からは、多くのことがみえてきました。この結果は「東日本大震災における医療・健康支援 男女共同参画の視点から」にまとめられています。

いわき市における保健師さんたちの震災対応は目をみはるばかりでその活躍ぶりに頭がさがる思いでした。保健師さんを支えることが、市民の皆さんの健康支援に繫がるのではないかと考えた契機です。その頃、福島県立医科大学公衆衛生学講座では保健師さんへの出前講座を行っており、保健師さんのお役にたつことができればという思いで協力させてもらうことにしました。この出前講座は保健師さんの知識向上、保健師さんと医師の情報交換、保健師さん自身のストレスと不安の軽減を目標とし、労働保健センターから研究費をいただき継続しています。平成26年度からは福島県保健師現任教育の枠組みの中で公衆衛生学講座、性差医療センター、災害医療総合学習センターが連携して出前講座を行っています。詳しくは本センターのHP(http://www.fmu.ac.jp/byoin/06seisa/06demaekouza/index.html)をご覧ください。

 

*堂本先生、天野先生、原ひろこ先生は震災から20日後、厚かましくも私たちがお願いしたもやし、キュウリ、レタス、みず菜、ナス、ほうれん草、キャベツ、ブロッコリーなどの野菜と女性用の肌着を車いっぱいに積んで東京から福島にいらしてくださいました。本当に涙がでるほどうれしかったことを昨日のように思い出します。ありがとうございました。

 

③  性差医療についての地域啓発活動

年に1回福島県性差医療セミナーと年に2回元気アップセミナーを開催しております。そのセミナーごとにテーマを決め、地域の皆さん、また医療従事者に性差医療を理解してもらえるように活動しております。平成27年12月6日「生活習慣と性差」に焦点をあて第11回福島県性差医療セミナーを開催いたしました。来場してくださった一般の方からは「勉強になった。もっと多くの人が聞いてくれるとよいのにね。もったいないね。」というお言葉をいただきました。

 

④  性差医療・医学教育、研究

医学部4年生に「性差とは?」「性差医療とは?」「性差と種々の疾患」について講義をしています。毎年、天野惠子先生、嘉川亜希子先生にも講義をお願いしています。この講義の中では、学生に、将来どのような分野に進んでも性差医療マインドを忘れないでほしいということを強調しています。また、研究につきましては「当院の性差医療センターの婦人科を受診する性成熟期患者さんはメンタルヘルスが低下しており、血中レプチンが低下していた」ことを報告しました(Yoshida-Komiya H et.al. Psychiatry and clinical neurosciences 2014; 68: 574-584)。

 

そして今後 東北にも性差医療のネットワークを作りたい!

 今年度から山形県立中央病院 内科 鈴木恵綾先生が当センターで診療してくださっています。他の東北地方の先生方とも情報交換できるような場があれば本当にうれしく思います。賛同していただける東北地方の先生方、ご連絡いただければ幸いです。

 

最後に支えていただいている皆様に感謝

本センターは忙しい中、兼務で診療を担当してくださっている先生、看護師さん、事務の皆さんに支えられています。いつもありがとうございます。

 

これからも、福島県立医科大学附属病院性差医療センターは患者さんにより良い医療が提供できるように努力いたします。今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

福島県立医科大学附属病院 性差医療センター部長 小宮ひろみ

http://www.fmu.ac.jp/byoin/new/sosiki/seisa.html

(写真は福島県 鶴ヶ城)

鶴ヶ城

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