女性外来の診察室から

No.18 禁煙支援は女性にとって最大の健康支援(千葉支部)

 

千葉県は、早くから天野先生や堂本前知事のご指導のもと、県の施策として県立病院を中心に女性外来が設置され、その後健康福祉センターの女性の健康相談窓口が設置されるなど、女性の健康施策を先進的に進めてきた歴史があります。

その歴史の中でNAHWが誕生し、千葉支部もそのような県の施策と連携しつつ様々な企画を行ってまいりました。その間の経緯はホームぺージの女性外来10年史で竹尾愛理先生が紹介されている通りです。

そして、現在では女性外来は県内だけでなく全国各地に設置され、女性の健康支援から性差医療へと様々な広がりを見せています。そのような中で千葉支部の会員は、今後の支部活動について新たな方向性を模索中ですが、まずはこれまでNAHWに育てていただいたスキルを、一人一人がその場で実践していこうとそれぞれの場で努力しています。

 

そこで今回は、私が予防医学上女性の健康にとって非常に重要だと思い、日々人間ドック受診者や女性外来で行っている禁煙支援について述べたいと思います。

 

女性の一生は、女性ホルモン分泌に影響される独特のライフサイクルがあり、喫煙はそのライフサイクルに応じて女性の健康にさまざまな影響を及ぼします。

例えば、思春期には月経不順の原因の一つとなりますし、性成熟期には不妊あるいは早産や死産など妊娠、出産合併症の増加はよく知られている通りです。また、胎児の低体重出生や成長障害、乳児突然死症候群など次世代の健康にも影響します。そして更年期には閉経を1-2年早めるといわれており、更年期以降には動脈硬化性疾患やがん、骨粗鬆症のような女性の後半人生の生活の質を妨げる疾患のリスクを高めます。またお肌の老化や歯周病の増加など美容面でも大きなダメージをもたらします。

 

2007年国民、健康栄養調査における死亡数をもとに統計学的に導き出したデータ(池田論文)によれば、喫煙は男女ともに死因に寄与する最大のリスクです。

また別の研究では、喫煙の疾病リスクは特に女性で大きく、多彩といわれており、よく言われる喫煙者のピル服用時の血栓症の増加以上に、喫煙そのもののリスクがずっと高く、ピル服用の合併症を気にする前にまず禁煙が重要ということになります。

 

また、喫煙者自身の健康だけでなく、受動喫煙による健康被害も深刻です、たばこ煙にはPM2.5成分が多量に含まれており、喫煙室内のPM2.5の濃度は北京の上空並といわれています。

また喫煙者の吐く息のPM2.5の濃度が下がるには3分以上かかるともいわれ、受動喫煙を防ぐには、環境の完全な禁煙化が必要です。そのため世界的に禁煙化政策がとられ、特に五輪開催国では禁煙法により国レベルで、公共機関はもとより、レストランやパブなどすべての領域で禁煙化が進んでいる状況です。

 

 そういうわけで女性の禁煙や受動喫煙予防は、健康面だけでなく、美容面や経済面、家族の健康を守るなど非常にメリットが大きく、そのサポートはとても重要な予防的治療といえます。

 

女性に対する禁煙支援では健康面だけでなく、美容上やアンチエイジングなどのメリットを強調すること、禁煙外来の利用など禁煙方法を具体的にお知らせすること、そして障害となる場合が多いパートナーや家族の喫煙対策が重要です。

そして、最も重要なのは環境の禁煙化だと思います。

2020年の東京五輪に向けて、このような女性医療の視点からの啓発活動や環境整備が進むことを願っています。

 

千葉西総合病院 健康管理センター長 小西明美

http://health-check.chibanishi-hp.or.jp/

たばこを吸う女性

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