性差医療情報ネットワーク東京支部は、宮尾益理子医師(当時：東大老年科女性外来、関東中央病院内科)、柴田美奈子医師（東金病院女性外来）と荒木葉子医師(荒木労働衛生コンサルタント事務所)の3人により、2004年に設立されました。

宮尾医師は老年内科、内分泌内科、そして女性外来、柴田医師は、内分泌内科、女性外来、荒木医師は血液内科出身ですが、当時は糖尿病外来および産業医学を中心に活動していました。専門分野も年代も違う3人でしたが、毎回和気藹々とミーティングを行い、「今日学んで、明日の女性外来にすぐに役立つ学術講習会」を企画してきました。

女性外来の活動の3つの大きな柱として、女性ホルモン関係、メンタル関係、漢方関係としました。

2004年当時は女性外来幕開けの時代で、様々な患者さんが訪れました。どこに行けばよいかわからないで困っていた方、今まで色々な医療機関に行っても満足な診断や治療を受けられなかった方など、背景も症状も今までの内科外来とは全く異なる方々でした。内科医ですので、月経や更年期に関してわかっているようで、十分理解していなかったり、精神症状の訴えは半数以上にのぼり、改めて精神疾患や心理療法について学ぶ必要性を感じたり、西洋医学とは異なるアプローチとして漢方医学を学びたい、など日々自分たちが困っていることを学べるものにしたいと考えて3つの柱を決めたのです。

また、全国の女性外来の医師たちも女性医療について体系だって学ぶ場が無く、孤立無援でしたので、学術講演会で集うことによってお互いの問題を共有し、励ましあう場でありたいと思っていました。

①女性ホルモン

女性ホルモンに関しては、米国のWHI（Women’s Health Initiative）結果が2002年に発表され、ホルモン補充療法（HRT）について大きな見直しがされました。日本はそもそもHRTの使用者は少なかったのですが、この報告を受けて、更に使用にブレーキがかかりました。本会では、WHIのその後について継時的に講習会を行い、適切な利用についてupdateしました。また、植物エストロゲンである大豆の効果についても講習会を企画し、欧米データだけではなく、「日本人」としての女性ホルモンの適正使用について検討してきています。月経異常、経口避妊薬、緊急避妊法、IUDについても企画しました。

性差の大きい疾患としは、骨粗鬆症、頭痛、尿失禁、肥満、睡眠障害を取り上げました。こうした疾患も女性ホルモンや加齢の影響が大きく、専門家の最新の知識を学び、性差を認識しながら治療することが必要であることを再認識しました。

②メンタル

メンタル疾患は本当に多い、というのが多くの女性外来担当医師の印象でした。最初に行ったのは、M.I.N.I（精神疾患簡易構造化面接法）についての勉強会でした。短い時間で診断するための構造化面接法です。一番頻度の多い気分障害、不安障害を重点的に学びました。また、産後うつ、PMSなど女性ホルモンの変動に伴っておこる精神症状や電気痙攣法などあまり学ぶ機会のない治療法、そして、非精神科医がメンタル疾患を抱えた患者さんを診るときのセルフケアについても学びました。

③漢方

漢方医学は、西洋医学的な診断がつかない患者さんに対し、効果を発揮しました。漢方を使いこなすためには、まず患者さんの体質と病気の時期を把握することが大事になります。おのずと「良く観て、良く聴く」ことが必要になりました。参加医師同士が脈診や舌診をして、「結構疲れているね～」などお互いに笑ったり、慰めあって徐々に漢方の力を付けていきました。数名の方は漢方の専門医も取得されました。

東京支部メンバーもこの10年の間に様々な変化がありました。

加齢に関しても実際に自分が体験し、こんな風に不自由になっていくのか、という思いと、いろいろな囚われから解放されていく思いと両方です。世代が異なりますので、それぞれの体験を話すことで視野が広がります。

これからの日本は、少子高齢化の中、全く経験したことのない社会になります。医療も当然変化していくでしょう。その中で、女性の果たす役割は大きいです。女性の健康を支え、またその大事なパートナーである男性の健康も支えるために、東京支部はこれからも活動を継続していこうと思っています。

－東京支部　学術講演会一覧－

半蔵門病院　糖尿病外来医師　荒木葉子

http://www.hanzomon.com/gairai/tounyou.html

関東中央病院　健康管理科部長　宮尾益理子　

http://www.kanto-ctr-hsp.com/patient/dock/

都立墨東病院　女性専用外来医師　柴田美奈子

http://bokutoh-hp.metro.tokyo.jp/introduce_part/woman.html