女性外来の診察室から

No.14「女性外来だからこそわかる食と健康」

今回は、岐阜県総合医療センター 女性外来客員部長 廣瀬玲子先生の寄稿です。

2002年4月より岐阜県は、岐阜県立岐阜病院(現在岐阜県総合医療センター)に「女性外来」を開始、その後、他の2つの県立病院でも開始し、現在に至ります。

 

 当女性外来では、初診問診票に、何時に何を飲食しているかを、記載していただいてきました。これがことのほか有用です。

 (一般的な内科外来や産婦人科の妊婦健診などの外来診療では、食生活を記録しての指導は、医師から栄養士や助産師にオーダーされる形ではないでしょうか?)

 

 女性外来では、確保された時間的余裕の中で、女性に寄り添い、心身をともに診療します。

心の問題にいきなり切りこまなくても、食生活を時間と内容、自分で用意するのか、誰と食べるのかなども含めて丁寧に尋ねることは、心理社会的背景を推理するのに十分な情報が得られます。また、東洋医学的診療にも、食事の問診はかかせません。

 

 問診例)中学生ないし高校生、朝はお腹がすかない、少しのパンとお茶、昼はお弁当少量、下校してから、スナック菓子をたくさん食べる、冷たい飲み物や、アイスクリームも食べる、夕食は、おかずだけ。時々腹痛と下痢。やせ。虚弱で、月経前あるいは月経のたびに体調不良で学校を休む。だるい。意欲に欠ける。くまあり。運動部ではない。運動の習慣がない。

 

 このような問診例の場合、一般的な内科系外来では「過敏性腸症候群」一般的婦人科外来では「月経困難症」や「月経前緊張症」として、それぞれの投薬がなされることが多いと思われます。だるくて、学校欠席が多くなると、心療内科で安定剤が処方されることもあります。

 

 この子の全体をみれば、成長期にあり、今後母になることもありうるこの生徒を導くには、食事と運動といった生活習慣を改善することが、とるべき方向性であることは明らかです。

 

 なぜ、そのような食生活になったのか、家庭の背景はどうなのか、家族の健康や家族との関係が大きな原因でもありますが、家族の愛が、治療(生活習慣の改善という処方箋)の原動力にもなります。

 

 思春期の成長のスパートの時期の性差が、思春期の健康問題発症の時期の性差に繋がっています。

小学校6年から中学1年などは、女子の不登校の最初の芽が多くみられますが、これには、こうした身体的背景があると考えられる場合もあります。

 

 身長が一番伸びる時、女子は月経も始まります。月経で失う栄養分と、1年で10cm近くも身長が高くなる分、重力に抗して、脳に血液を運ぶためには、心臓や血管や自律神経の機能が増す必要があり、その分の栄養と運動が必要です。

 

 こうした女性外来を担当する中で私は、改めて栄養学も学び、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質は私たちの食べるたんぱく質や補酵素となるビタミンやミネラルが元となり必須であること、鉄不足の体調不良、血糖値と精神の関係、拒食症のある時期の下肢の浮腫はビタミンB群の不足による脚気的な状況であること、拒食症の甲状腺ホルモンの全体的低値や、白血球や血小板などの低値も、栄養不足に起因すること、さらには、グルテン不耐症の存在など、たくさんの勉強をさせていただいてきました。

 

 こうした、気づきを日々女性外来で得られます。

 生徒とその家族が、食生活などの生活改善といくらかの漢方だけで、確実に健康を取り戻す実感を、当人や家族と共に感じられる喜びに感謝です。

 こうした分野に導いていただきました、天野恵子先生ありがとうございます。

 

岐阜県総合医療センター 女性外来客員部長 廣瀬玲子

http://www.gifu-hp.jp/WomensClinic/

草原の女子高生

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