女性外来の診察室から

No.8  ME/CFSの新しい治療法:和温療法

ME/CFSとは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群のことを指します。

ME/CFSとは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群のことを指します。

 

和温療法は鹿児島大学循環器内科教授(2012年退官)鄭 忠和先生が、1989年から取り組まれてきた慢性心不全患者のための温熱療法で、2012年9月に心不全に対しての高度先進医療として認定されました。私が現在勤務している静風荘病院(埼玉県新座市)では2010年より本治療を開始しました。

 

本治療は、乾式遠赤外線サウナを用いた40度から60度の低温サウナ浴を15分間施行した後、出浴後30分間の安静保温を行います。

遠赤外線は熱透過性に優れており、表皮を通過し皮下組織において温熱効果を発揮することから、他のミストサウナなどと異なり体表面を過度に温めることなく、患者が熱による痛覚刺激を受けることもなく、効率よく深部体温を上昇させることができます。

この方法によって、患者の深部体温は約1度上昇し、体温上昇が約30分間維持されますが、その間心拍数や体血圧の変化はほとんどなく、酸素消費量の変化は僅か0.3METs程度で、心臓に対して負荷の無い治療法であることが確認されています。また、サウナ浴前後に体重を測定し、その発汗量に見合った量の飲水をしてもらい、脱水の予防にも努めています。

和温療法を一日1~2回、週3~5回、2~6週間施行すると、前述の難治性疾患に明瞭な回復が得られます。症状緩和後も、さらに週2~3回の反復継続により和温療法の効果は持続します。

 

和温療法は我慢を強いる従来の治療法とは異なり、安全で対費用効果に優れ、患者をなごませ爽快な発汗を促す優しい包括的治療です。難治性のME/CFSについても有効であると報告されていますので、静風荘病院でも、2010年より、ME/CFSに対する治療法として積極的に施行してきました。ME/CFS患者の全身の血管機能を改善し、中枢・末梢の自律神経や神経体液性因子(ホルモン活性)を是正し、自己免疫や生体防御機構を賦活化すると考えられ、全身の疲労感に先立ち、頭重感・抑うつ感・不眠・食欲不振・気分不良などが著明に改善し、漢方薬等の併用やマッサージ等のリハビリテーションプログラムを取りいれることにより、順調に生活の質(QOL)が改善されます。

 

2014年には、京都で開催された国際温泉気候学会にて、ME/CFSに対する和温療法の効果について発表しました。医師からの紹介またはご自身がインターネットを見て、「慢性疲労症候群ではないか」といって私のところへ診察にいらした方は、48名いらっしゃいましたが、カナダの診断基準(現在、国際基準となっている)に合致した方は18名のみで、入院による和温療法を受けられた方は9名でした。そのうち、2名は効果を認められない一方、7名の方が有意な改善がみられるという状況となっています。

 

参考文献:Masuda A, Kihara T, Fukudome T, et al. The effects of repeated thermal therapy for two patients with chronic fatigue syndrome. J Psychosomatic Research 58(2005) 383-387

タオルとバラ

 

 

 

 

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