天野理事長ブログ&スケジュール

2019.06.14

日本国内での『向精神薬の長期処方に関する潮流』について(3)―睡眠薬の処方・睡眠障害対処の指針について―

国立関門医療センター 循環器内科 女性総合診療センター 早野 智子先生の投稿です。

眠る女性

 

前回は、抗不安薬について掲載させていただきました。今回はとくに睡眠障害対処の指針と睡眠薬の処方についてお届けいたします。

すでにNAHW会員の先生方にはご承知のことも多いかと存じますが、以下の内容を、おさらいとしてご一読いただければ幸いです。

 

☆不眠症の診断:

主な国際分類やWHO・アメリカ精神医学会等での診断基準に共通しているのは、『夜間に不眠症状があっても、昼間の生活に支障がなければ不眠症ではない。』という点です。

各診断基準では、不眠症は昼間の病気であるという側面が強調されています。

昼間の生活に支障がなければ、安易に睡眠薬を処方しないことが推奨されているといえそうです。

 

睡眠薬(不眠症治療)のまとめ:

・睡眠薬投与の前に睡眠衛生指導を!

睡眠薬の処方に走る前に、次の12項目を、睡眠衛生指導としてご活用ください。

1)日中の眠気で困らなければ睡眠時間は8時間にこだわらない。

2)刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法を。

3)眠たくなってから床に就く。就寝時刻にこだわりすぎない。漫然と寝床にいない。

4)同じ時刻に毎日起床。(日曜の朝も遅くまで寝ない)

5)光の利用でよい睡眠。(目が覚めたら日光を取り入れ、夜は明るすぎない照明を)

6)規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣(朝食は心身の目覚めに重要 夜食は軽く)

7)昼寝をするなら、就寝の15時間前の2030

8)眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝、早起きに(寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る)

9)睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・ムズムズ感は要注意。(睡眠の病気を疑い専門治療が必要。)

10)十分眠っても日中の眠気が強いときには専門医に。

11)睡眠薬代わりの寝酒は不眠の元。深い睡眠をえらし夜中に覚醒の原因となる 

12)睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全。(一定時刻に服用し就床。アルコールと併用しない)

 

・日本では依然BZDが主流ですが、BZD以外のZ-drugzolpidem(マイスリー)zopiclone(アモバン)eszopiclone(ルネスタ)などの非ジアゾピン系薬物 *特徴:筋弛緩作用が弱い 抗不安作用も弱い)、ラメルテオン、スポレキサント今後の主流となるかと予測されています。

 

BZDに限らず、そのほかの睡眠薬・睡眠薬代用薬(抗ヒスタミン薬や抗うつ薬など)も漫然とした使用は控えることが推奨されます。どの薬剤も減量を試みる際には、漸減法か隔日投与法がお勧めです。

 

以上、長くなりましたが、日々の診療で、患者さんとの話題のひとつにでも、挙げていただけましたら幸いです。 

ちなみに今回179名の受講者に、司会医師が挙手でアンケートをとったところ、日常診療中に使用している睡眠剤:第1選択薬は、8割以上がゾルピデム(Zdrug)、1名がブロチゾラム(BZD) 1名がトリアゾラム(BZD)でした。

 

国立関門医療センター 循環器内科 女性総合診療センター 早野 智子

https://kanmon.hosp.go.jp/bumon/joseisougou.html

 

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