天野理事長ブログ&スケジュール

2019.03.12

日本国内での『向精神薬の長期処方に関する潮流』について(1)

―長期処方の制御を目標とする診療報酬算定要件の2018年度改定から―

国立病院機構関門医療センター 循環器内科 女性総合診療センター 早野 智子先生の投稿です。


ハートを持つ男性

 

先日、勤務先の国立関門医療センターで、下関医師会の協賛のもと、「向精神薬*の長期処方に関する研修会」が開催されました。

抗不安薬と睡眠薬について、当院精神科医師より、下関市内の総合病院勤務医・開業医を対象にレクチャーがされたのは、今回が初めてです。

2時間にわたり、院内外から計179名の医師が受講しました。

 

*向精神薬=精神・中枢神経系に作用する薬:(具体例)抗うつ薬 抗精神病薬(=統合失調症の治療薬) 抗不安薬 睡眠薬 抗てんかん薬 中枢刺激薬 気分安定薬 などを指す。>

 

このようなレクチャーが行われたのは、2018年度の診療報酬改定に伴い、向精神薬長期処方時の減算条件が新たに変更されたためです。2014年度から2年ごとに同薬剤の減算算定要件は変更を重ねられています。

これまで、診療報酬算定要件の改定の目的は、「向精神薬を3~4種以上多剤併用すると、処方箋料が従来の料金の半額以下になる」という、多剤併用を減少させることにとどまっていました。

 

ところが、今回2018年度より、新たに向精神薬の長期処方の制御を目標とする改定が、多剤併用時のさらなる減算改定と別個に成立しました。

具体的には、「不安の症状または不眠の症状に対し、ベンゾジアゼピン系の薬剤を12か月以上連続して同一の用法・容量で処方されている場合、処方箋料68点→(多剤併用時)40点 処方料42点→(多剤併用時)29点に減算する。」という算定要件です。

 

ただし、「当該症状を有する患者に対する診療を行うにつき十分な経験を有する医師が行う場合または精神科医から抗不安薬等の処方について助言を得ている場合等特に規定する場合を除く」という除外条件がついています。

 

睡眠薬がないと夜眠れない、寝付けない、夜中に目が覚めると訴える患者さんも臨床現場では多く、12か月以上経過しても、なかなか睡眠薬処方を終了できないケースはめずらしくないのではないでしょうか。

 

次回は、当院精神科 若林祐介医師による講義のエッセンス:ベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZD)の頻用からいかに離脱するか』をテーマに続編をお届けしたいと存じます。

 

NAHW会員の先生方にはすでにご承知のことも多いかと存じますが、おさらいとしてご一読いただければ幸いです。

(参考出典:精神医学 2018Vol.60 No.9 ほか)

 

 

国立病院機構関門医療センター 

循環器内科 女性総合診療センター 早野 智子

https://kanmon.hosp.go.jp/bumon/joseisougou.html

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