
天野恵子先生により、「Gender-sensitive Medicine (性差医学)」に基づいた女性専用外来の理念が広がり、日本全国に女性専用外来が立ち上げられてから約20年。東北では、福島県立医科大学に2004年に「女性専門外来」が設立され、2008年に「性差医療センター」となり、当時、福島県立医科大学附属病院 性差医療センター教授であった、現・国立成育医療研究センター 女性の健康総合センター長の小宮ひろみ先生を中心に、女性専門外来・地域啓発・教育・研究に取り組んで参りました。私は、2003年に仙台の地で拝聴した天野先生のご講演に感銘を受け、以来、天野先生、小宮先生にご指導いただきながら、「性差医学」をライフワークの1つとして取り組んでおります。
2000年代、他の地域同様に、東北地方でも様々な医療機関で「女性外来」が立ち上げられました。しかしながら東北という土地柄もあってか、県を跨いでの横の繋がりを持つことが難しく、個々の先生が、それぞれの方法で、悩みながら診療に携わってきたという印象です。その地道な努力が20年を経てようやく形となり、2026年は、東北における「性差医学」の新たな一歩を踏み出す年になるのではないかと感じています。
2026年1月31日、2月1日に「第19回 日本性差医学・医療学会学術集会」が、東北大学医学系研究科循環器内科学講座教授 安田聡先生を会長に、同研究科分子内分泌学講座教授 菅原明先生、同研究科腎臓内科学准教授 宮崎真理子先生を副会長に、「性差医療とクロスディシプリナリーアプローチ」をサブテーマとして仙台国際センターで開催されました。2008年の第1回学術集会から参加している私にとって、この会は20年間の日本の性差医学の発展を強く実感する、感慨深いものとなりました。性差医学は、「エビデンスに基づき、性別を1つの特徴とする個々の特性にかなった医学」、つまり性差をふまえた究極のオーダーメイド医学です。その1つの側面が「女性外来」であり、性差医学が知られる大きなきっかけとなりました。十分な傾聴や漢方を用いた診察は、女性外来での診療において欠かせないものです。一方で、「性差医学」の考え方やアプローチは、私たちが普段診療を行っている多くの病態・疾患においても、重要となるものです。今回の学術集会では、循環器・内分泌・腎臓・自己免疫・脳神経分野など、様々な内科領域における性差についての講演やシンポジウムがございました。それぞれの分野の基礎、最先端の研究内容、そして性差と、内科医である私にとってはいずれのお話も非常に興味深く、耳をダンボにして拝聴し、多くの学びがございました。また、一般演題は多分野にわたり、臨床・研究ともに、今後の日本の性差医学のますますの発展を期待させるものでありました。「性差医学・医療学会」ほど、様々な科のドクターが一堂に会する学術集会は珍しく、自分の専門分野のみでは知りえない発見や、新たな出会い、繋がりを得ることができます。これまで性差医学にあまり馴染みのなかった先生方も数多く参加され、東北地方における「性差医学」の新たな一歩を感じた学会となりました。
そして3月には、株式会社ツムラ主催の「女性医師のためのKAMPOスキルアップセミナー in 東北」が開催されました。この会は、東北で女性外来・女性診療に携わる女性医師の皆様の、県を跨いだ横の繋がり・ネットワークを作り、性差医学・漢方医学についてさらなるスキルアップを図ることを目的に、2018年に小宮ひろみ先生とともに立ち上げた勉強会です。その後、コロナ禍を除き、毎年開催してまいりました。第1回から天野惠子 先生にお越しいただき、特別講演として、性差医学・医療の基本から、女性診療における漢方薬の応用、そして女性の健康総合センター開設に至るまで、日本における性差医学の歩みやホットトピックをお話しいただいております。今回は、福島県立医科大学附属病院 性差医療センター部長の山口明子先生に、基調講演として「女性特有の症状について考える −月経随伴症状−」をテーマにお話いただき、一般演題として弘前大学の石山絵里奈先生、登米市民病院の新井真理奈先生、秋田大学の引地悠先生に、漢方を用いた女性診療について症例提示いただいた後、小宮ひろみ先生から「女性の健康総合センターの進捗状況」について、天野惠子先生から「性差医学・医療の導入から女性の健康総合センター開設まで Part2」として、特別講演を行っていただきました。女性診療における基本から応用までの漢方薬の使い方、開設2年目となる女性の健康総合センターの活動や目指すところ、そして天野先生のお話と、いずれも充実した内容で、会場では多くの質問と熱い意見が交わされました。会場参加24名、WEB参加24名、合わせて48名と、東北6県、さらには、東北以外からも、多くの先生方にご参加いただきました。アンケート調査では、「充実した内容で大変勉強になった。来年もぜひ参加したい。」との意見が多く、東北の先生方の熱い想い、ポテンシャルの高さとともに、「性差医学・女性診療」を通して、県や診療科の垣根を超えた繋がりが、少しずつ強くなってきていることを感じています。
「性差医学・医療学会」を中心とした研究領域での発展と啓蒙、「女性外来・女性診療」の臨床に携わる女性医師のスキルアップ、横の繋がりと、東北における「性差医学」の大きな2本の柱が整って参りました。さらに、20年わたりに東北の「性差医学」を引っ張って来られた小宮ひろみ先生が、2024年に国立成育医療研究センター 女性の健康総合センター長に就任され、「性差医療、女性医療」をベースに、日本全国の女性の健康の司令塔としてご活躍されています。
今、東北に性差医学の風が吹いています。「チーム東北」が一丸となり、日本の性差医学・女性診療の一翼を担えますよう、さらなる発展と成長を目指ししていきたいと思います。
山形県立中央病院 糖尿病・内分泌内科 鈴木 恵綾
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