女性外来の診察室から

内分泌内科医がかかわった女性外来 ―カルシウム異常―

24年間県立病院で、女性外来に携わり、内分泌内科医として、患者様に喜ばれた症例も経験した。その1つが、カルシウム異常です。血中カルシウムは、採血で簡単に調べられますが、ドックや検診、一般かかりつけ医で、採血されてないことが多く、疾患が隠れている可能性も考えられます。ここでは、その症例をご紹介いたします。

① 86歳女性
施設入所中ですが、血圧がやや上昇し、食欲低下、不眠にて、当院消化器内科に施設担当医から紹介された。消化管検査は、腹部CT, 上下部内視鏡検査で異常なく、老人性うつ病として、家族の希望にて女性内科に紹介。骨粗鬆症で、かかりつけ整形外科からビタミンD製剤を内服し、血中Ca濃度が12.0 mg/dLと高値であり、直ちにビタミンD製剤中止、飲水の促進、輸液を施設担当医に連絡した。すると、血中Ca値は正常化して、全ての症状は改善した。

② 76歳女性
高血圧にて、かかりつけ医からCaブロッカーを投与されているが、血圧コントロールは不十分、体の火照り、便秘、嘔気による食欲低下、不眠あり。かかりつけ医から更年期障害と言われて紹介された。血中Ca 11.2 mg/dL, 血中PTH-intact 97 mg/dL、頸部エコーにて副甲状腺肥大が、甲状腺両葉の下極にあり、123I-MIBIシンチグラフィーでは、甲状腺両葉の下極以外に、上縦隔にも異所性副甲状腺腫あり。血中PTH-intactサンプリングで、上縦隔周囲の静脈にPTH-intact Step Upあり。胸部外科、心臓外科医のチーム医療にて、上縦隔の異所性副甲状腺腫は切除され、血中Ca値は、9.0 mg/dLに正常化し、当初の来院時の症状は全て改善し、患者さんは、大満足された。

③ 67歳女性
背部痛、腰痛、前胸部痛にて、かかりつけ整形外科受診。胸椎、腰痛、肋骨と多発性骨折あり、杖歩行となり、仕事もできず休職となった。内科的疾患が疑われ、家族の付き添いにて、当科に紹介された。喫煙は継続し、20本/日である。運動習慣は全くない。血中Ca 10.9 mg/dL, 血中PTH-intact 136 mg/dL, 甲状腺左葉下極に副甲状腺腫が頚部エコー、頸部CTでみられ、123I-MIBIシンチグラフィーも集積し、内分泌外科にて、副甲状腺腫を切除した。その後、骨粗鬆症の加療を行い、現在は、杖なしで歩行可能で、復職可能となった。

④ 57歳女性
能登に在住され、本年1月1日の能登震災で、家は全壊となり、避難所にて生活していた。以後体重が10 kg/5ケ月減少した。意識レベル低下、腹部膨満感から、骨盤内腫瘤が見られ、避難所の診療担当医師から、当科と婦人科に紹介された。骨盤内腫瘤は当院婦人科で、造影CTにて、径17cmの卵巣腫瘤と判明した。腫瘍マーカーのCA125 は、815.0 U/mLと高値であった。血中Ca 11.3 mg/dLと高値を認めたが、PTH-intact 14.0 pg/mLと正常であり、PTH-rp 12.5 pmol/Lと高値であり、尿中Ca 排泄量も4920 mg/gCr(正常は300 mg/gCr以下)と高値であった。頸部エコーや99mTc-骨シンチは異常なかった。当科では、高Ca血症クリーゼも懸念され、入院の上、輸液、エルシトニン、ゾレドロン投与で加療を行い、婦人科で左卵巣腫瘤を切除した。病理検査では、左卵巣明細胞癌であったが, 免疫染色で、PTH-rpも陽性と判明し、PTH-rp産生腫瘍と診断された。術後8日目で、血中PTH-rpも<1 pmol/L, 尿中Ca 92.8 mg/gCrまで改善して骨代謝マーカー、骨密度も改善した。

以上の症例を、経験しました。
高カルシウム血症はさまざまな疾患によって引き起こされますが、原発性副甲状腺機能亢進症と悪性腫瘍がほとんどの症例を占めています。高カルシウム血症は、軽度または慢性の場合は症状がほとんど見られず、重度または急性の場合は意識障害や昏睡に至るまで、さまざまな臨床症状を伴うことがあります。高カルシウム血症に関連する症状と徴候は、通常、病因とは無関係です。

高カルシウム血症の臨床症状
高カルシウム血症は、さまざまな臓器系に影響を及ぼす可能性があります。高カルシウム血症の症状は、高カルシウム血症の程度と血清カルシウム濃度の上昇率の両方に依存します。さらに、症状の発現には個人差があります。

●軽度の高カルシウム血症 - 軽度の高カルシウム血症 (カルシウムが正常上限を超えているが、12 mg/dL [3 mmol/L] 未満) の患者は、無症状の場合もあれば、便秘、疲労、うつ病などの非特異的な症状を訴える場合もあります。
●中等度の高カルシウム血症 – 血清カルシウムが中等度に上昇した 12 ~ 14 mg/dL (3 ~ 3.5 mmol/L) は、慢性的には十分耐えられるかもしれませんが、これらの濃度に急激に上昇すると、多尿、多飲、脱水、食欲不振、吐き気、筋力低下、感覚の変化などの顕著な症状を引き起こす可能性があります。
●重度の高カルシウム血症 – 重度の高カルシウム血症 (カルシウム > 14 mg/dL [3.5 mmol/L]) の患者では、急性の中等度の高カルシウム血症の患者に見られる症状が進行することがよくあります。
●神経精神医学症状
軽度の高カルシウム血症には、主に原発性副甲状腺機能亢進症の患者にみられる多くの神経精神障害が関連しています。最も一般的な症状は、不安、うつ病、認知機能障害です。副甲状腺機能亢進症の矯正後、これらの症状の一部またはすべてが改善したことが報告されています。
中等度 (カルシウム 12 ~ 14 mg/dL [3 ~ 3.5 mmol/L]) または重度の高カルシウム血症 (カルシウム >14 mg/dL [3.5 mmol/L]) の患者では、原因を問わず 、無気力、混乱、昏迷、昏睡などのより重篤な症状が発生する場合があります。これらの症状は、高齢者やカルシウム濃度が急激に上昇している患者で発生する可能性が高くなります。
●消化器症状
便秘、食欲不振、吐き気などの消化器症状がよく発生します。便秘は、平滑筋の緊張低下や自律神経機能の異常に関連している可能性があります。膵炎と消化性潰瘍は、他の消化器症状よりも頻度が低いです。膵炎発症のメカニズムとして、膵管へのカルシウム沈着と膵実質内でのトリプシノーゲンのカルシウム活性化が提案されています。ラットでは、急性高カルシウム血症により、血清アミラーゼが用量依存的に増加し、急性膵炎の形態学的特徴が現れます。
消化性潰瘍は、原発性副甲状腺機能亢進症による高カルシウム血症の患者で報告されており、カルシウム誘発性のガストリン分泌増加によって引き起こされる可能性があります。ゾリンジャー・エリソン症候群と副甲状腺機能亢進症が併存する多発性内分泌腫瘍症 1 型 (MEN1) の患者では、副甲状腺摘出術のみで血清ガストリン濃度と酸分泌が大幅に減少しました。
●腎臓への影響
腎臓の最も重要な症状は、多尿(遠位尿細管の濃縮能力の低下による)、腎結石、急性および慢性腎不全です。
アルギニンバソプレシン抵抗性 - 慢性高カルシウム血症は、患者の最大 20% で濃縮能力の欠陥(アルギニンバソプレシン抵抗性 [AVP-R]、以前は腎性尿崩症と呼ばれていました)と多尿および多飲の症状を引き起こします。そのメカニズムは完全には解明されていませんが、アクアポリン 2 水チャネルのダウンレギュレーションと髄質のカルシウム沈着、二次的な尿細管間質障害、および間質浸透圧勾配の生成障害が重要な役割を果たしている可能性があります。
●心血管症状
まれではありますが、重度の高カルシウム血症は不整脈を伴うことがあります。慢性高カルシウム血症は、心臓弁、冠動脈、心筋繊維へのカルシウム沈着、高血圧、心筋症を引き起こす可能性があります。

血中Ca検査は、採血のついでに簡単に検査ができますから、一度は採血して見ますと、新たな病気が発見されることもあった、経験を書いて見ました。ご参考にして頂ければ、幸いです。

石川県立中央病院  女性外来担当 藤井 寿美枝

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