女性外来の診察室から

No.20 時計台記念病院女性総合診療センター女性外来

カレスサッポロ時計台記念病院 女性総合診療センター長 藤井美穂先生の投稿です。

2007年4月より「女性総合診療センター」を立ち上げ、9年が経過しました。

北海道初の女性知事1期目の選挙公約である「道立病院での女性外来立ち上げ」が2003年、トップダウンの形で出身大学である札幌医大に設立されましたが、当時その設立をコーディネートし実際に産婦人科の女性外来を担当した経験を、当院の外来体制に反映してきました。

 

「総合診療」という名称は、新専門医制度の基本領域の一つである総合内科と混線しながら、一般社会でも知られるようになりましたが、10年前には、縦割り診療ではなくワンストップで診断がつけられるセンターにしたいという意味で女性総合診療センターと名付けました。

この9年間にその診療内容は変わり、求められる医療を提供できる内容が増えた反面、ある面では患者の求める医療から解離してきた点が反省されるところと考えます。

 

【外来の構成医師】

絶滅危惧種といわれる全国的な産婦人科医師不足を背景に、当院も苦慮しています。現在は、常勤医師:2名(女性2)、非常勤医師:3名(女性2・男性医師1)、週1回の大学からの応援医師で運営していますが、患者数に対して医師、看護スタッフが不足しており、待ち時間が長いこと、診察希望医師の予約が4ヶ月待ちという問題点を、助産師、排泄ケア領域の専門看護師、生殖医療に携わる胚培養士、思春期女性カウンセリングを担当する臨床心理士、不妊カウンセラー、心理カウンセラーなどの専門職が女性総合診療センターを支えてくれています。

 

【外来診療内容】

分娩以外の婦人科診療のすべてを提供しています。生殖年齢では、子宮癌検診にはじまり、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣腫瘍など器質疾患、子宮癌、卵巣癌の診断と治療、中高年齢の子宮や膀胱、直腸などが腟を通して脱出する骨盤臓器脱、尿失禁の診断と治療、ホルモン異常による出血や更年期女性には漢方やホルモン療法、思春期の月経異常、先天異常、不登校や引きこもりなどの対応、不妊や習慣流産などに対しては体外受精・胚移植などを含めた生殖医療の提供など、広域に亘る内容です。

 

【入院診療内容】

上記の疾患に対して手術療法を行うことになりますが、週2日は朝から、週3日は午後から年間450件の手術を、週1回の大学からの若手医師、月4回の大学の教授を含めたベテラン医師の応援をもらいながら常勤女性医師2名で行っています。手術の6割が腹腔鏡下手術で高度な技術を要求されるため、週末になるとストレスが蓄積してくるのを自覚しますが、手術が好きな仲間との時間は楽しみであり苦痛とはなっていないので、まだまだこの状態は続くだろうと考えています。

 

センター開設後、私のやりたい診療と社会ニーズに応える診療を提供し、また後輩の育成のためにも質を落とさない診療を続けようと決めた9年間を顧みると、診療の広がりは得たものの、持続可能なセンターを再構築するための人的資源が必須課題となりました。

一方、3年前から当院での手術ライブと札幌医大でのカダバーを使った腹腔鏡手術、マクロ解剖のプログラム構成の「時計台骨盤手術解剖セミナー」を主宰していますが、大先輩の古典術式と最先端の内視鏡手術を学ぶために全国から集まってくれる、私たち外科医のモチベーション維持に貢献していることと考えています。

 

日々の診療とアカデミックな追求のバランスを取りながら、常勤、非常勤の4名の女性医師達は頑張っています。次回はバージョンアップした当センターの診療内容をご報告したいものです。

 カレスサッポロ時計台記念病院女性総合診療センター長 藤井 美穂

http://www.tokeidaihosp.or.jp/tokeidiai/syoukai/fujii.html

時計台

 

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