天野理事長ブログ&スケジュール

2016.03.25

漢方とノーベル賞①

今回は天野理事長のコラムです。

 

2015426日から8回にわたって開催された「第10期実践東洋医学講座」が2016228日の最終回をもって終わりました。

 

この日の講義の中で、私が最も感銘を受けたのは田中耕一郎先生による地骨皮(クコの根の皮)のお話の中での一言。

 

「地骨皮(チンピヒ)に柴胡(サイコ)と青蒿(セイコウ)を加味すると、身体にこもった熱、身体の芯の熱をとる作用があります。マラリアの特効薬アーテミシニン(青蒿素)がこの生薬である青蒿から作られます。このアーテミンの発見等により多くの人類を救った功績で、2015年に中国の女性科学者にノーベル医学生理学賞が授与されました。」

 

未だ、漢方薬を「エビデンスがない」「まじないのような物だ」と言われる医師も多いのですが、伝統医学や民間療法で使われている薬草から活性成分を見つけ、それを医薬品として開発する研究は世界中で行われており、多くの医薬品が開発されています。

 

良く知られているのがアスピリンです。アスピリンは、柳の樹皮に含まれるサリチル酸が原型で、その副作用を軽減するためにアセチル化して合成された薬剤です。

 

早速、「マラリアと青蒿」について調べてみました。

マラリアは、熱帯地域に存在するハマダラカを媒介とするマラリア原虫によって引き起こされます。体内に侵入したマラリア原虫は肝臓で増殖し、その後赤血球を破壊し始めます。高熱、頭痛、吐き気を引き起こし、ひどい場合は脳症や腎不全により死に至ります。

 

私は、医学部の4年生の夏に1ケ月間立川の米軍病院でエクスターンとして勉強させてもらっていました。時は、ベトナム戦争の真只中で、立川米軍病院には戦地からマラリアに罹った兵士が次々と輸送され、腎不全に落ちいった兵士には、大きなタンクのような腎透析器による透析が行われていました。マラリアは、現在でも熱帯・亜熱帯地域の97ケ国にのぼる国と地域に分布し、全世界では年間2.14億人が感染し、其のうち43.8万人が死亡していると報告されています(WHO 2016)。

 

今回ノーベル賞を授与された方は、中国中医科学院のYouyou Tu(屠呦呦)女史。

19301230日、中華民国浙江省丁寧波市生まれ、北京大学医学院薬学科卒業後、中国中医研究院(現在の中国中医科学院)に勤務。1960年代から1970年代かけての文化大革命の時期に研究を続けていました。

この時期、科学者たちは毛沢東思想により最下層の階級とみなされており、女史は、改革開放の後、1980年に始めて研究員に昇進しました。

現在は、科学院の主席研究員です。

 

感染症と治療薬

 

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