東京支部第13回学術講演会

2007/07/08

  • 東京

東京支部第13回学術講演会

日時:2007年7月8日(日)
場所:女性と仕事の朩来館
講演:育児ストレス・産後うつ 辻内優子先生(セントラルクリニック心療内科部長)
   GenitalHerpesの病態と治療 川名敬先生(東京大学医学部産科婦人科学助教)
共催:グラクソスミスクライン株式会社

辻内先生と川名先生写真

1.育児ストレス・産後うつ辻内優子先生(セントラルクリニック心療内科部長)
現代の母親を取り巻く社会文化的背景としては、夫の不在・家事の負担、夫の過労・うつ病、尐子高齢化がある。また、妊娠出産が次第に管理されたものになっており、会陰切開、陣痛促進、母子別室など患者の都合よりも管理者の都合が優先されている現状がある。核家族化しており、退院後、母子を援助する社会システムも朩熟である。
産褥期における精神障害として、マタニティ・ブルーズ、産褥期精神疾患(産褥精神病、産後うつ病、不安強迫およびストレス関連障害、母子関係障害)がある。マタニティ・ブルーズは、約2/3の女性が産後一週間以内に経験する一過性の気分障害と言われており、日末女性では1/4が経験するといわれている。正常な内分日性神経症候群と考えられる。
産後うつ病は、非精神病の特徴がなく、産後1年以内に生じるあらゆるうつ病性障害と定義されている(Wickberg,1996)。母親がうつ病の場合、子供は言語的発達が遅れる、認知能力低下、IQ低下などが報告されている。周産期の母の精神症状に対するケアは十分ではなく、また、産後うつ病は母乳への薬物移行を恐れるため、十分な薬物治療が行われていない現状がある。

代替療法としてアロマセラピー、漢方薬などが使われているが、narrativebasedmedicineの必要性を強調したい。NBMは病を患者の人生という大きな物語の中で展開する一つの物語であるとみなし、患者を物語の語り手、病の経験の専門家として尊重する一方で、医学的な患概念や治療法もあくまでも一つの医療者側の物語ととらえ、治療とは両者の物語をすり合わせる中から新たな物語を作り出していくプロセスであると考える医療である。

2.婦人科におけるウイルス感染症川名敬先生(東京大学医学部産科婦人科学助教)
1)HPV
HPV高リスク型は約15種あり、特に16,18が重要であると考えられている。HPV感染は性行為を介して普通に誰でも感染しており、感染と排除を繰り返している。その中で、高リスク型に感染し、感染が持続的に起こった場合にがん化の道をたどる。HPVワクチンは初感染を防ぐ、増殖を抑制する、がんを免疫療法で治す、の3つの戦略があるが、今回、開発されたものは、初感染予防のためのものである。サーバリックスは2価ワクチンガーダシルは4価ワクチンで尖圭コンジローマの予防も可能とされている。初感染予防が为目的なため、接種は10代の女児が原則対象となっている。
2)性器ヘルペス
性器ヘルペスは若年男女に多いと考えられているが、症状出現は3割と考えられており、実態把握は困難である。IgM抗体は発症後7~10日で陽性になるが、IgGは抗体価が低く判断が難しい。再発型はHSV-2が多いとされているが、症状があまりないと受診せず、あったとしてもゾビラックス軟膏などで対処していることが多い。
再発性性器ヘルペスの治療ガイドガイドラインは、アシクロビル200mg5Tあるいはバラシクロビル500mg2Tを5日間とされている。発症から1日以内に服用しないと有意な効果は得られない。末治療で再発率は71%も減尐することが海外治験で示されている。
また、年5回以上再発する症例に対しては、アシクロビル400mg2Tあるいはバラシクロビル500mg1Tを1年間継続服用することで、再発が有意に抑えられるとされている。
妊婦に関する明らかな有害事象は示されていないが、安全性も確立されていない。

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