東京支部第10回学術講演会

2006/07/08

  • 東京

東京支部第10回学術講演会

日時:2006年7月30日(日)
場所:東京八重洲ホール
講演:パニック障害の診断と治療 貝谷久宣先生(赤坂クリニック理事長)
   強迫性障害の診断と治療 大坪天平先生(昭和大学医学部精神医学教室助教授、昭和大学附属烏山病院副院長)
共催:グラクソスミスクライン株式会社東京支店

貝谷先生写真

抄録:
1.パニック障害の診断と治療貝谷久宣先生(赤坂クリニック理事長)
パニック発作とは、ある限定時間内に激しい恐怖感や不安感とともに、4つ以上の症状(心悸亢進、発汗、身震い、息苦しい、息が詰まる、胸痛、吐き気、めまいなど)が突然出現し、10分以内にピークに達する。パニック発作が起こることで、予期不安、回避行動が起こり、広場恐怖が起こり、次第に社会生活が困難になってくる。パニック障害患者は、検査では異常がでないこうした病気があること(何度も検査を繰り返す患者がいる)、薬で調整可能であり、医師の指示通りに服薬すること、この病気では死なない、ことを認識することが重要である。患者の周囲は、心の持ちようということではない、昔のこととの関連を指摘しない、わざとやっているわけではないことを理解、心の病気に偏見を持たない、ことが重要である。パニック障害は、遺伝性および環境性要因があるといわれている。治療は、短時間作用型の抗不安薬は望ましくなく、最初は長時間作用型のベンゾジアゼピン系の薬剤(メイタックス)などを用い、SSRIや三環系抗鬱薬を加えて、長期安定化を図ることが効果的である。パニック発作が起きてから服薬するのではなく、起きないように定期的に服薬すること、自分勝手に調整しないこと、減薬はゆっくり、が原則である。予期不安や回避行動により、社会活動に障害が起きている場合は、認知行動療法、曝露療法、リラクゼーション法などが効果がある。

パニック障害にはしばしばうつ症状を伴うが、majordepressionと病型は異なっており、DSM-IV分類の非定型うつ病の形をとることが多い。パニック系不安うつ病は、愛情不足、自己存在感や自尊心の気迫、他者から嫌われたくないという無意識な思い、過剰な他者配慮の破たんなどが原因と考えられる。認知行動療法としては、愛されているという認知の補強や確認、务等感の除去、自己为張のスキル、自己客観視の向上、ストレスコーピング、情動コントロールなどがある。

2.強迫性障害の診断と治療
大坪天平先生(昭和大学医学部精神医学教室助教授、昭和大学附属烏山病院副院長)
強迫性障害には強迫行動と強迫観念がある。確認、洗浄、溜め込み、懐疑、左右対称性へのこだわりなどが見られる。不安やうつと合併していることも多い。薬物治療としては、SSRIの効果が報告されているが、通常の薬用量よりも多い量が必要であり、効果も40~60%とされている。長期投与が必要な場合が多く、短期で中断した場合は再発率が高い。
衝動制御障害との考え方もあり、DA受容体遺伝子が関与するとの報告もある。
女性に多いのは、強迫買い物症であり、買い物を行う衝動、欲動、誘惑に抵抗できない、買い物の前に緊張感や興奮の高まりを感じる、買い物の際中は喜び、満足感または解放感を感じる、買い物の後は後悔、自責感、あるいは罪悪感を感じる。問題飲酒やニコチン依存あるいは、社会的障害をきたしている場合が多い。

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