女性外来の診察室から

第92回 女性外来は大変だけれど奥が深い!

今年、当院は女性外来を開設して20年の節目を迎えました。先日、第16回の性差医学医療学会で、“地域医療における性差医療(女性外来)の実践”としての発表の機会を頂きましたので、多少重なりますが、このコーナーでも私が実践してきた女性外来の20年の歩みを振り返らせていただきたいと思います。
私は1992年、麻酔科で緩和ケアーをしていた主人と二人で、“ずっと診つづける、地域に根差した医療を行いたい”との思いで開業いたしました。7名で開業しましたが、30年経た現在、92名のスタッフに支えられ、無床のクリニックを運営しております。
開業にあたっては駅裏の人口減少地域で、薬品卸のコンサルタントが”開業には不適、やめたほうが良い”と話すようなところでした。ただ、患者さんと身近な関係を作り、患者さんに寄り添う医療を行いたいという思いですでに閉院し3年たっていた医院を買い取り開業した30年前を思い出します。
更年期世代を支える医療を目指していた私にとって、性差医療、天野先生との出会いは、大きな転機となり新たな目標が上乗せされたようでした。
1999年に始めていた、更年期女性のための勉強会”おりひめの会”の取り組みにも性差医療の様々な情報が良い刺激となり、2003年4月には当院でも熊本県下第1号の女性外来の開設を行いました。診療所の内科の女性医師が①30分かけて②内容を問わず③性差医療の知識を活用して診察を継続して行うためには、最新の性差医療の知識を得る必要が在り、情報収集、知識のバージョンアップにはそれなりの苦労もありました。天野先生が女性外来担当医師のためにいくつもの学びの場を作って頂き、頻回に上京しては各種セミナーに参加し、全国の思いを同じくする素晴らしい女性医師の先生方と出会うことができ、ネットワークもできました。天野先生のご指導の下、NAHWの九州支部も立ち上げさせていただき、性差医療に造詣の深い素晴らしい九州の先生方との交流も深まり、とても楽しく充実した日々を過ごすこともできました。
女性外来は非採算部門であることは覚悟のスタートでした。初めの4年は一人ひとりの時間がかかるばかりで、経営的にも厳しい状況が続きました。やっと5年目あたりから患者数も収入も増加しだし、その後、ずっと増加し続けています。外来の忙しさが増していくに従い、女性医師が一人ずつ増え、現在では女性医師4名、理事長の計5名で外来診療を行っています。この20年、外来患者の7割が女性で、年齢層は40代から60代が半数以上を占めます。
時間をかけて丁寧に診てきた更年期女性が元気になると友人や家族を次々に紹介してきます。また、彼女ら自身も来院し続け、結果として高齢の患者は20年から30年通院している人かその患者の身内という、長く深い付き合いの人が多く、診療にも自然に力が入ります。そんな環境を生み出してくれたのも、女性外来のお陰だと実感している今日この頃です。未病のうちから予防に力を入れ、女性の健康寿命に一番影響の大きい骨粗鬆症の治療は、1次予防、ゼロ次予防(健康教室や小学校の検診での運動指導など)までおこなっております。また親子4代で通院している方も多数います。今も、開院当初と同じ、ずっと診つづける、地域になくてはならないクリニックを目指して活動中です。そろそろ世代交代を意識するようになり、次世代の医師やスタッフの育成に力を入れています。開業して30年、迷わず全力疾走できたのも女性外来、性差医療との出会いがあったからと感謝の気持ちでいっぱいです。女性外来での新たな出会いを楽しみに、さらなる10年も地域医療のために頑張りたいと思います。


春日クリニック 女性専用外来 清田真由美

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