女性外来の診察室から

NO.81 コロナ禍における女性外来受診者 ―10代女性の増加について―

今回は国立病院機構 関門医療センター 女性総合診療外来 早野智子先生の投稿です。

平成14年より開設しました当院女性外来:「女性総合診療外来」では、現在、月曜午後:週半日を、循環器内科 早野が担当しております。開設当初は10歳代から80歳代の幅広い年齢層の受診者に、週5日間、5科担当医の当番制で対応させていただいておりましたが、近年は主に成人を対象に診療を続けて参りました。

その理由の一つに、10歳代の拒食症症例では、入院治療まで携わる経験の中で、精神科専門医師の手厚いサポートが不可欠で、精神科医師が複数名在籍する施設が望ましいと実感したことが挙げられます。

以後、明らかな拒食症については、他院への受診をお願いしておりますが、年間1~2例の頻度で、食事に異常なく内分泌・代謝異常等を疑われる10歳代症例を、市内産婦人科や小児科、内科よりご紹介いただくことがあります。その際には、問診・診察、血液検査値等をふまえて、当院内の専門医を介し、下垂体異常等の精査・治療を山口大学附属病院へお願いして参りました。

ただ、昨年秋からの変化として、10歳代症例の女性総合診療外来紹介件数が1か月に2~3名以上と増加しています。主訴は、胸痛・動悸・体重減少・不眠等々です。循環器内科外来でまず器質的心疾患・不整脈のスクリニング検査を行ったうえで、女性総合診療で30分間~1時間、マンツーマンに再度の問診・診察・傾聴をします。結果、内分泌異常や遺伝子異常のスクリニング精査を専門医に依頼しなければならない場合もある一方で、10歳代思春期のストレス過多な状態に気が付くことも、ままあります。

診察時に不安についての検査:STAI: State-Trait Anxiety Inventory(状態・特性不安検査)1)を行うのですが、10代の受診者は、「状態不安」・「特性不安」ともに42点以上と有意に高い症例が多い印象です(結果は4段階評価: 低い ふつう 高い 非常に高い)。

一昨年初めから続くコロナ渦の影響があるのでしょうか。とくに第5波:デルタ株流行期から、罹患者の数が若年者・高齢者とも急激に増え、その時期から当院「女性総合診療外来」への10歳代受診者数も増えてきた感があります。

現在の新型コロナウイルス感染流行下での学校活動について、日本小児科学会HP等でも、昨年8月から提言が発表されています2)が、少し時間差を置いて私たちの「女性総合診療外来」でも、10代女子学生の心身不調の訴えに向き合い始めているところです。

手探りではありますが、当院の心理療法士、精神科医師、栄養士をはじめとする専門多職種と連携して、お一人お一人のニーズを探り当て、院内外のベストサポーターに医療サポートを繋ぐ役割を少しでも果たし続けていければと願っております。

1)    STAI: State-Trait Anxiety Inventory(状態・特性不安検査)

目的 不安の2因子(状態不安・特性不安)を測定

適用年齢 中学生以上

所要時間 約10分

保険点数 80点

原著 Spielberger,C.D

日本語版 水口 中里 下仲

*「状態不安」とは、特定の時点や場面、出来事、対象物に対して抱く一時的な不安反応を指します。

*「特性不安」とは、その人の性格などに由来し、不安になりやすい傾向を持つ性質のことを指します。

「状態不安」との違いは、「特定不安」は人により「状況不安」への感じ方が異なり、「特性不安」が強いと、特定の状況に対してほかの人よりも強い不安を感じるという点にあります。

2) 厚生労働省第48回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年8月18日開催)鈴木基先生提出資料

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00294.html

 

国立病院機構 関門医療センター 女性総合診療外来 早野智子

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