女性外来の診察室から

多様な人材が活躍できる職場をめざして(時計台病院)

時計台記念病院院長・女性診療科部長 藤井美穂先生の投稿です。

手の上のはーと

2021年は昨年を大きく上回るCovid-19感染者で医療施設は対応に追われた1年だった。

当院でも40床の1病棟を感染病棟としベッドを確保したが、対応看護師の補填に病院全体の病棟から助勤体制を取り、看護師、理学療法士、クリニカルエンジニアなど、それこそ多職種連携のチーム医療体制を取ることで乗り切った。苦しかった時期にチャレンジし、経験値を上げたスタッフ達は「いつでも来い」と言う、逞しい集団に成長したと実感する。

一方、感染症で混乱する社会状況に対応しながら、当院は法人内2病院を統合した新病院を移転建設する構想の実現に歩んでいる。

この中で4月から泌尿器科グループの参加とロボット手術の導入という大きな流れがあった。特にわれわれ外科医達はロボット支援下手術の魅力に引き込まれてしまった。婦人科チームも早速、ダヴィンチ手術の術者サーティフィケートを取得し、腹腔鏡下手術の一部をロボット支援下で手術を行うことにした。私自身は6月後半から開始し40例を執刀、手術時間と出血量の減少を経験した。コンソール内の3Dモニターの前に座り、両手の親指と中指で小さなハンドルを摘み、両手の示指、両足で操る7個のペダルで、術野に挿入された操作鉗子を両手の動き通りに完全に連動させる。何といっても拡大された鮮明な組織構造を確認しながら、血管や神経を避け安全に操作できることが魅力である。時として小血管の拍動や尿管に伴行して分布する細血管や尿管の蠕動の美しさと精緻にプログラムされた構造に見惚れてしまうことがある。

65歳を有に超える年齢の医師が、新たにロボット支援下手術に取り組むことは極めて少ないだろうと思う。しかし、5歳下の私の手術の相棒は「死ぬまでにどこまで手術が上手くなるかが人生の目標」といいながら、30代、40代の仲間と切磋琢磨している。

日本は世界一の長命国であり少子高齢化を示す逆ピラミッドの人口構成であり、アカデミアにおけるシニア研究者の役割が変わる必要があるという論文を目にした。各国の労働力人口に占める60歳以上労働力人口の割合を比較すると、2010年のデータでは、ドイツ、フランスが2.5%、アメリカ、イギリスが6%、スウェーデンがやや高く8%、日本はなんと19%である。一方、技術者として第一線で活躍できる年齢の国際比較では、ドイツ、イギリス、アメリカでは71〜78%が年齢と無関係と答えたのに反し、日本ではなんと14.6%だけが能力があれば年齢は無関係と答えたに過ぎなかった。

神戸製鋼社長、会長を務めた実業界の傑物と言われる亀高素吉氏は、会長退任後の72歳の時、北里大学大学院薬学研究科の聴講生となり、その成績は学生の群を抜いて際立つオールA。さらに教授に誘われ、神戸大学経済学部卒の亀高氏は、基礎研究に没頭し研究論文を書き上げ、薬学博士号を取得したのだった。家族は、10年間、週3回は朝方3時、4時まで勉強する父親の姿を目にしていた。

婦人科チームの女性医師の一人が子供の不登校を契機に仕事を辞め、新たな女性医師がチームに加わる予定だ。当院の他診療科の女性医師達も当直や当番を当たり前に勤める医師、短時間勤務で働く医師、さまざまである。性別、年齢にとらわれず、各人の能力と方針に応じた多様な働き方を選択し、いきいきとした時間を医療の現場で発揮してもらいたいと職場作りに力を入れる毎日である。

カレスサッポロ時計台記念病院院長・女性診療科部長 藤井美穂

http://www.tokeidaihosp.or.jp/gairai/dr/m-f.html

 

 

 

 

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