女性外来の診察室から

No.71「女性外来で最も多い主訴」(山梨県立中央病院)

山梨県立中央病院/女性専門科部長 縄田昌子先生の投稿です。

薬を飲む女性

 

2016年8月のコラムで「~女性外来の主訴№1はめまい~」の記事を掲載しました。

4年半が経過した現在も主訴No1の座をゆずることはなく、当科受診患者の最も多い主訴はめまいで変わりがありません。

前回は1663人で集計し130人がめまいを主訴に受診していました。今回その後の受診患者2540人中めまいは254人で、2番目に多い頭痛165人と大きな差をつけ断トツの1位でした。その他の主訴は倦怠感163人、不安153人、ほてり・発汗152人、気分の落ち込み137人、不眠、124人、身体の痛み120人・・・と続きます。

 

開設から16年が経過し、まもなく17年目に突入しますが、これだけの長期間最も多い主訴でありつづけた「めまい」について考えました。

当科を受診する方の多くは複数の医療機関をすでに受診しています。検査で異常がなかった、めまい止めが効かない、様子をみるように言われた、仕事・家事ができない、などと訴え、症状が長引いている状態で受診されます。

なぜめまいが続いている方がこんなにも多いのか?そう考えたとき、原因がはっきりしないために治療にたどり着いていない、という答えに行き着きました。

 

そこでめまい患者254人の原因について集計したところ、最も多かったのはうつ病・うつ状態の82人で不安障害の69人と合わせて精神科疾患によるめまいが多いことがわかりました。めまいが治らないこと、思うように動けないことで気持ちが落ち込み、また起こるのではないかと予期不安も出現し、多くの方が悪循環に陥っています。

東洋医学的にみると瘀血、水毒が多く、それぞれ71人、24人でした。最近はすでに漢方薬を服用している患者さんも増えていますが、適切な漢方薬を処方するためには四診と呼ばれる丁寧な診察が必要です。舌やお腹を診て冷えや便通、ほてりや口渇などめまいと関係のない症状も確認するため診察に時間がかかります。

それ以外では鉄欠乏性貧血27人、亜鉛欠乏症24人とミネラル不足によるめまいの方も多くみられました。亜鉛に関しては倦怠感を訴える方100人で集計した際、71人で低下しており、外来では亜鉛低下による不調が多いと感じています。

 

今回めまいについて考え行きついたところは、当科で診るべくして診たという結論でした。

当科の主訴にめまいが多いのは、時間が限られた通常診療では病態を把握しきれず治療が難しいからだと思いました。めまいの原因は様々ですし、長引いためまいを治すためには背景因子や月経との関連、東洋医学的な診察、生活習慣指導など時間がかかります。Narrative Based Medicineを用いたアプローチなどでめまいの背景要因を見つけて解決できるめまいもあり、何回目かの通院でやっとたどりつくこともあります。

最近は困ったら女性外来で相談したら的な口コミで受診する方も多いのですが、これは決して当科が特別なところということではなく、十分な診察時間が確保され、診療しやすい環境が整った恵まれた環境によるところが大きいと思います。

このような診療に対して診療報酬などもう少し光が当たるとよいなど妄想しつつ、日々の診療に追われている毎日です。

 

山梨県立中央病院/女性専門科部長 縄田昌子

 https://www.ych.pref.yamanashi.jp/department01/396/

 

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