女性外来の診察室から

No.65 CAYA世代がんサバイバー女性患者診療に携わって(福島県立医科大学附属病院)

性差医療センター部長 小宮 ひろみ先生の投稿です。
※CAYA=childhood, adolescent, and young adult

笑顔の女の子

福島県立医科大学附属病院性差医療センターは婦人科、内科、心身医療科、乳腺外科、歯科医師による女性診療を行っております。

開設から12年が経過しました。完全予約制ですが、多くの患者さん方の診療に携わらせていただいております。

センター内で婦人科は、婦人科の器質的疾患・内分泌疾患、更年期症候群、月経困難症、月経前症候群、自律神経失調症などを担当しております。

エビデンスに基づいた診療はもちろんですが、傾聴を重視すること、漢方薬を多く処方していることなどが特徴です。

 

最近、当センター婦人科が携わっております医療についてご紹介いたします。

皆さんは小児と思春期・若年成人の時期に発症するがんについてご存じでしょうか。

30歳代までに発症するがんで、「小児・AYA(adolescent, and young adult)がん」あるいは「CAYAがん」と呼ばれています。

国立がん研究センターのデータによれば2009年から2011年の

小児がん(0歳から14歳)の罹患率は、人口10万人あたり12.3、

AYA世代のがんは、15歳から19歳が14.2、20歳代31.1、30歳代91.1

と報告されています。近年、CAYAがんの治療成績は向上し、生存率は70%を超しています。

すなわち、これはがんサバイバー患者数が増加し、長期フォローアップが必要なことを意味します。

第3期がん対策推進基本計画の中にはCAYA世代に対するがん対策の取組が明記されました。

これまで、CAYAがん患者さんたちは、小児科から成人科の担当の狭間に置かれ、また診療科も横断的診療が必要にもかかわらず、その整備がなされていない状態でした。

今後は、CAYAがん患者さんに対して原疾患の治療だけでなく、QOL向上を目的とした医療がますます展開されてくるものと思います。

 

現在、CAYAがん患者さんに対して、注目されていることのひとつは妊孕性温存です。

福島県立医科大学附属病院では生殖医療センターが患者さんたちの治療にあたっています。本稿では、がんサバイバー患者さんのヘルスケアについて述べたいと思います。

CAYAがんサバイバー患者さんは化学療法や放射線療法の副作用により性腺機能停止あるいは低下を含む内分泌異常、二次がん、心血管疾患、代謝異常(肥満・脂質異常症、糖尿病、メタボリック症候群)の発症が報告されております。

CAYAがんサバイバー患者さんの生命予後は対照集団と比較し低下していることも報告されており、ヘルスケアの概念は重要であると考えます。

 

2019年5月7日に福島県立医科大学附属病院の中に小児・AYAがん長期支援センターが開設されました

(センター長 小児腫瘍科 菊田 敦教授HP: http://www.pedonc.fmu.ac.jp/aya/)。

本センターは治療終了後も成長過程とそのライフイベントに応じて、成人がんとは異なる医療、支援を提供し、横断的診療を可能にするものです。

CAYA世代の患者さんは様々な晩期合併症を抱えて生活し、各年代により必要とされるニーズは多様であるため本センターの果たす役割は重要です。

この中で、私たちは、CAYAがんサバイバー女性患者さんの婦人科内分泌異常及びヘルスケアを担当しています。

患者さんは、原発性無月経、続発性無月経、早発卵巣不全、月経不順のため紹介・受診されます。

現在、まだ患者さんの数は少なく、原疾患の構成が多様であるため、ひとりひとり患者さんにしっかり向き合い治療をすすめることを心掛けております。

米国産婦人科学会からCAYAがんサバイバー女性患者さんに対する課題として「思春期発来の有無、過多月経への対応と貧血予防、セクシャリティーと避妊、卵巣機能不全、骨粗鬆症、乳がん検診、子宮がん検診の推奨」などが提起されました(ACOG committee opinion, Obstet. & Gynecol. 2018)。

産婦人科領域だけでもすべきことがたくさんあることを診療に従事しながら実感しているところです。

 

近年、CAYAがんサバイバー女性患者さんのヘルスケアに対して「オンコウイメンズヘルス」という概念が提唱されてきました。

長期フォローアップの中で、患者さんのQOLを向上するため、性差を考慮した「オンコメンズヘルス」「オンコウイメンズヘルス」の概念が必要ではないかと思います。

今後、CAYAがんサバイバー患者さんに対して生殖機能・妊孕性温存と同時に「性差」を意識したヘルスケア医療体制の構築と医療介入がなされていくことを期待しております。

 

福島県立医科大学附属病院 性差医療センター部長 小宮 ひろみ

https://www.fmu.ac.jp/byoin/06seisa/01greeting/index.html

 

 

 

Copyright © 2014 Japan NAHW Network. All Rights Reserved.