女性外来の診察室から

N0.53 NHK「あさイチ」出演後の反響 [微小血管狭心症](埼玉・静風荘病院)

今回は当団体理事長、天野惠子先生の執筆です。

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2017年の12月、NHKの「あさいち」に出演し、微小血管狭心症についてお話しました。

 

NHKの「あさイチ」は、朝の連続ドラマにつづいて、有働アナウンサーと井ノ原快彦(V6)が司会を務める生活情報番組で、40代~50代の女性が対象とされています。

 

この時の反響がすさまじく、静風荘病院には「私も微小血管狭心症ではないか」という受診依頼が毎日のように届けられています。

放送前は、月に1回、第4金曜日に5人だけと設定していた初診日外来は、現在は第2、第3、第4、(第5)の金曜日、さらに火曜日や木曜日にも初診が入るという超絶なスケジュールとなっています。

 

私が40歳の時に、高校時代の同級生から胸痛について相談を受けたのが、きっかけで微小血管狭心症について機会あるごとに情報発信を続けているのですが、いまだ、循環器内科医にすらこの疾患についての情報が浸透されておらず、私のところへ受診される多くの患者さんが、すでに循環器内科で心臓カテーテル検査まで終了されています。

 

多くは、「心臓、冠動脈には何の異常もない。逆流性食道炎ではないですか?」といわれ、消化器内科へいき、歯が痛いので歯医者へいき、挙句の果てに自ら精神科を受診されていたかたもいます。循環器内科医に対して「私は微小血管狭心症ではないですか?」と問いかけても、「そんな狭心症はない」と返事が返ってきたと訴える方も後を絶ちません。

 

私が医学部の学生だったころには、男性の狭心症にエストロゲンが投与されていました。

エストロゲンの血管拡張作用を狭心痛の治療として使っていました。

男性の乳房が大きくなる副作用に対して、乳房が大きくならないエストロゲン作用を持つ薬剤の開発を真剣に研究していらした先生もいらっしゃいました(その後、カルシュウム拮抗剤が狭心痛に対して著効を示すことがわかり、エストロゲンが狭心症の薬として使われることはなくなりましたが)。

 

閉経前後の女性10人に1人は経験する安静時に多く、数分といわず、時には長く続くこのタイプの胸痛については、エストロゲンの減少・枯渇が引き金となっていることは間違いないと考えます。

 

内科医が、この疾患を「そういう胸痛も女性にはあるようだ」と思ってくださり、丁寧に話を聞き、とりあえずヘルベッサー、ワソラン、コニールのいずれかを処方していただければ、どれだけ多くの女性が救われるかわかりません。

 

近年、医師会からの講演依頼があったときには、必ず微小血管狭心症についてお話しています。

講演後「やっとどんな狭心症か分かった」という声が上がるようになった背景には、NHKなど映像メディアが、最近、毛細血管の働きや破綻について頻繁に取り上げるようになったことが大きいと考えています。

 

2010年には日本循環器学会から「循環器領域における性差医療に関するガイドライン(班長:鄭 忠和 掲載:Circulation Journal Vol. 74, Suppl. II, 2010)が出ています。

その中で、微小血管狭心症についても取り上げております。

是非、目を通して下さい。

 

性差医療情報ネットワーク理事長/埼玉県静風荘病院 特別顧問

野 惠子

 

 

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