女性外来の診察室から

No.48 日本初女性専用外来エリアでの診療を、新病院でスタートして(石川)

石川県立中央病院 藤井 寿美枝先生の投稿です。

当院は、本年1月に新病院への移転を行い、2018年1月9日に、開院となりました。

新病院では、女性専用外来エリアという名称で、全国で初めて、診療室と検査室を一体的に配置した女性専用外来エリアを設置しました。

 

女性特有の病気を対象とする乳腺・内分泌外科と婦人科の診察室と、これらの診療科に特に実施の多い検査であるマンモグラフィ検査室とエコー検査室を一体的にまとめて配置(1階)しました。

 

また、女性の身体的症状、精神的な不安などについて、女性医師による総合的な診療を行う、女性診療科も併設しています。 

 

 一体的な配置によるメリットして、

  • 一連の検査から診察までの患者さんの導線を短縮できる男性の患者さんはいないため、女性のプライバシ―に配慮した安心できる環境を確保できる。 

  • 検査にあたって、検査専用の更衣室と待合室を設けて、予め、検査衣に着替えて待合室で待っていただくことで、検査時間を短縮できる。

  • 患者さんが、マンモグラフィ検査とエコー検査の両方を実施する際に、その都度着替える手間が省けます。

 

以下が、その写真と間取り図です。

201806藤井先生1

 201806藤井先生2

 

このような、新病院での女性専用外来を再出発して、まだ日も浅いのですが、印象深かった経験を2つほど報告いたします。

 

 

1)症例 33歳 未婚女性の診察

 

家業のお寺のお手伝いをされている女性が、肥満症でまず、女性診療科に受診されました。母、母方祖母に乳がんの既往があります。

身長156cm、体重 89 kgの肥満症で、当初ダイエットをして、80 kgまで減量したが、ダイエットと運動をしているのに、体重が増加するという。また食欲がないともいう。

体型は、体幹部肥満があり、クッシング症候群を思わせる。内分泌的には、甲状腺左葉に腫瘤が触れ、甲状腺機能は正常であった。

甲状腺エコーにて、左葉に径13 mmの砂粒体を伴う結節が見られた。腹部エコーでは、卵巣の長計34 cmの嚢胞性腫瘍が見られ、マンモグラフィと乳腺エコーでは、左乳房にカテゴリー3の構築の乱れた腫瘤が見られ、乳腺エコーでも、悪性が示唆された。

 

そこで、同日、私の専門外来での甲状腺穿刺吸引細胞診の予約、乳腺外科では乳房腫瘤の生検の予約、婦人科では、診察後、次回MRIの予約をして行き、このフロアーで、女性診療科から、内分泌内科、乳腺外科、婦人科と3科で、共同して診療とその精密検査の計画を立てることができた。

この患者様は、石川県輪島市という能登半島先端で、車で2時間かかる遠方からこられたので、大変感謝されて帰られた。

 

2)2018年4月から、私は、予防医療室長も拝命、週3回、人間ドックも行っている。

 

女性の方も、周囲に癌が増え、初めて人間ドックを申し込みされた方も人数が増加している。

 

午前中から、この女性専用外来では、人間ドックの方の、婦人科検診、甲状腺エコー、乳腺エコー、マンモグラフィ、腹部エコー、をたった1時間で、受けられる。

 

その後、甲状腺結節があり、穿刺吸引細胞診が必要なら、改めて私の専門外来での穿刺の予約、また、乳腺外科にも受診予約など、今まで3名/28名を経験した。

 

人間ドックは、単に報告書を記載するのみではなく、次のステップとして、患者がどのような専門的な診療を受けていけば良いか、真剣に相談する面では、女性専用外来にも通じることもあると気がついた。

 

当院のような、高度専門急性期病院で、専門・臓器別の診療が多い中で、女性外来や人間ドックの診察を終えた患者様はホッとした表情で、笑みを浮かべ、感謝の言葉を話され、帰宅される。

このように、改めて、個々の病態を系統立てて整理を行い、今後、患者様が、いかに、その人らしく人生を送るかをお手伝いする部門として、各病院に必要なオアシスの部署を自負して、仕事を行っている次第です。

 

石川県立中央病院 糖尿病・内分泌内科 

診療部長 藤井 寿美枝

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