女性外来の診察室から

No.42 Bスポット治療について(東京)

当団体理事長、天野惠子先生(静風荘病院 女性外来特別顧問、松戸市立病院女性特別外来)の投稿です。

診察を受ける女性

 

慢性疲労症候群については、以下、今までも何回か書かせていただいた。

 

(過去の性差医療コラム参照)

2015213日 ME/CFSの新しい治療法:和温療法

201549日 ME/CFSの名称をめぐる混乱

201557日 CFS患者の日常生活困難度調査事業 報告会

 

2016年4月から、私はAMEDME/CFS研究班(班長は関西科学福祉大学 倉恒弘彦教授)に参加し、今年度は「慢性疲労症候群に対する治療法の開発と治療ガイドラインの作成」に携ることになった。

 

聖マリアンナ医大の遊道 和雄教授が、国内外のME/CFS治療に関する文献1926編を一次スクリーニングし、CFS治療と関係のない論文、重複した論文など156編を削除し、870編の論文を再度二次スクリーニングした上で、各治療法の推奨度、推奨のエビデンスの根拠となった引用文献についての評価リストを作成してくださった。

 

結果は、残念なことに、

①薬物療法(抗うつ薬、漢方薬、コルチコステロイド、immunogloburin,Staphylococcus toxoid, アシクロビル、インターフェロンαなど)

②運動療法・リハビリテーション・温熱療法(段階的運動療法、和温療法、ヨガ療法、認知行動療法)

③栄養補助食品類(ビタミン、ミネラル、補酵素など)

④補完代替療法

 

などについて検討した結果、段階的運動療法のみが「適切な指導者の下で行うことが勧められる」のB判定であり、他の治療法については考慮しても良いが、さらに科学的根拠の検討・集積が必要のC判定に終わった。

 

ところが、唯一B判定であった段階的運動療法が、つい最近米国アメリカ疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)のME/CFSのホームページから削除された。

重症度の異なる患者における治療効果の比較などについても、質の高いエビデンスの報告はほとんどなく、治療ガイドラインとしては「現在積極的にお勧めできる治療法はございません」という情けない結果に終わってしまった。

 

私としては、それでは現場が困るであろうと考え、現在、私が有望と考えている治療法について書かせていただいた。

 

項目としては、和温療法、B細胞性非ホジキンリンパ腫、多発血管炎性肉芽腫や難知性ネフローゼ症候群の治療薬として適応のあるanti-CD20抗体医薬リツキシマブやToll like receptor 3 アゴニストである不適合2本鎖ポリマーRNA製剤(米国商品名Ampligen)、経頭蓋磁気刺激療法、Bスポット治療についてである。

 

今回は、その中で、日本人の78割の人が実は罹患しているといわれる上咽頭炎の治

療Bスポット治療(最近、EAT Epipharyngeal Abrasive Therapy 上咽頭擦過療法と改

名された)について情報を発信する。

 

 

◇上咽頭炎治療としてのBスポット療法◇

 

Bスポット療法は慢性上咽頭炎に対する塩化亜鉛治療で、 1960年代に東京医科歯科大学耳鼻咽喉科教授の堀口申作先生が開発した治療法である。

 

当時は、喘息、膠原病、関節リウマチ、頭痛、自律神経障害、アレルギー疾患などの全身疾患との関連が精力的に研究された。

しかし,残念ながら最終的に臨床医学に定着することが無く、「鼻咽腔炎」の概念そのものが日常臨床の場から忘れ去られていた。

 

しかし、近年、扁桃摘出とステロイドパルス療法を組み合わせて、IgA腎症の7割を寛解に導いた堀田修医師らの報告(*)以来、耳鼻科領域以外の慢性疾患へ改めて応用され、良い結果が出ている。

 

堀田らは、201410月から20159月までに、子宮頸がんワクチン接種後に機能性身体症候群を発症した筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群ないしは線維筋痛症の患者41例を経験した。

 

症状は、頭痛、全身の疲労、睡眠障害、頚部・背部のこわばり、生理不順、めまい、筋力の低下、吐き気、認知の異状、耳鳴り、腹痛ないしは下痢、広い範囲の痛み、関節痛、発熱、むずむず足、咳、不随意運動などが主たる症状で、41人中34人が登校できない状況にあった。

 

全員既にステロイド、入眠剤、抗不安剤、非ステロイド系抗炎症剤、ビタミン剤などの治療を受けていたが、効果を認めていなかった。

19例が軽い上咽頭炎を自覚していた。41例中16例がBスポット治療を受けることに同意し、全ての薬の服用を中止した。

Bスポット治療により、13例で著明な症状の改善を観察し(4例が全快)、残り3例では改善が認められなかった。

 

上咽頭は細菌やウイルスに対する免疫の最前線に当たる場所で慢性の炎症が起きやすく、活性化リンパ球、神経線維が豊富な部位であり、免疫系・神経伝達・脳脊髄液静脈循環を介した機序などが上咽頭-大脳辺縁系相関に介在する機序として考えられている。

 

ME/CFSにおいて症状から障害部位と推察される脳下垂体、中脳、間脳に近い位置にある上咽頭の慢性炎症を治療することはME/CFSの改善に資する可能性がある。

本治療は手技も容易で、安全であり、安価である。

 

現在、関町内科クリニック申偉秀医師からの情報を得て、ME/CFS患者に積極的にBスポット治療を開始している。

その効果は、咽頭痛、目の奥が痛い、頭が重くて考えがまとまらない、思考力・記憶力の低下がある、肩がこる、など、首から上の症状を劇的に改善している。

 

(*)AMEDJapan Agency for Medical Research and Development):国立研究開発法人 日本医療研究開発機構

 

性差医療情報ネットワーク理事長 天野 惠子

http://www.seifuso.or.jp/shinryo/seni 

(静風荘病院女性外来 特別顧問)

https://www.city.matsudo.chiba.jp/hospital/kakkyokusinryouka/kakusyuiryo/joseitokubetsugairai.html 

(松戸市立病院 女性特別外来医師)

 

 

 

 

 

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