女性外来の診察室から

No.41 性差医療センター外来から(福島県)

今回は福島県立医科大学附属病院 性差医療センター部長 小宮 ひろみ先生の投稿です。

 

本年度も医学部の「性差医療」の講義が終了しました。

福島県立医科大学では「性差医療」の講義を医学部4年生に対して9時限施行しています。具体的にはシラバスをみていただければ幸いですが、多くの先生のご協力を得て充実した内容になっていると思います。
いつも最後の講義では「女性外来とNarrative Based Medicine, 漢方療法」について話しております。

Narrative Based Medicineについてはすでに本ネットワーク理事長の天野先生がその重要性を述べていらっしゃいますが、女性外来の診察室で毎日診療しておりますと本当に重要であると痛感いたします。
たとえば、更年期症候群ですが、更年期とは閉経前後の10年であること、成因、症状、治療についてはよく知られています。
特に成因についてエストロゲン低下、患者さんの気質、環境要因が重要であること、治療法はホルモン補充療法、漢方療法、対症療法、サプリメントなどがあることは周知されています。

どの患者さんにどのような治療法が適切かはまだ明らかではないことも多いと思いますが、ホットフラッシュや発汗にはホルモン補充療法、血流不全や精神神経症状には漢方が有効なことは報告されています。

いずれにせよ、個別化が必要であり、担当する医師と十分にお話しをして、患者さんが納得された上で治療にすすむことが必要です。
特に、通常の婦人科外来に比較し、女性外来には、難治な患者さんが受診します。そのような中でNarrative Based Medicineは重要なスキルです。

患者さんが語るという行為によって、自分の中で何が問題であるのかに気づくという場面に多く遭遇します。
通常の医療現場、診察室ではなかなか難しいことではありますが(通常の外来でもNarrative Based Medicineのマインドは重要と思います)、この女性外来では可能です。そのスキルを学ぶことはEBMを行う「疾患をみる」ことと同様に「病を癒す」という点からも価値が大きいと思います。

そして、漢方療法。
全人的治療であり、不定愁訴という言葉を持たない漢方療法と性差医療の考え方は類似しています。漢方療法なしでは、少なくても本院の女性外来を受診くださる患者さんの多岐にわたる症状を治すことはできないことを確信しております。

たとえばですが、患者様からご了解をいただきましたので、ご紹介いたしましょう。

40歳台の女性。ご主人がご病気で亡くなられ、それから体調を崩し、持病のアトピー性皮膚炎が悪化して、近医の内科、皮膚科、心療内科受診しておりましたが、改善しません。更年期症状もあり、当院を受診され、皮膚科紹介、そしてご主人を病気で亡くされた辛さと悲しみを傾聴し、加味逍遥散を処方しました。

長い間、どこに行っても改善がなく、職場復帰もままならなかったのですが、かなり改善され、患者さんに笑顔がもどりました。女性外来を担当して、本当によかったと思える場面です。

最近は、講義を受けている医学部の女子学生さんが、外来の見学にくることもあります。ひとりでも多くの学生さんが性差医療に興味をもってくれるよう、また、将来どの診療科にすすもうとも「性差」を意識して医学、医療に携わることができるように学生教育もがんばろうと思います。

 

福島県立医科大学附属病院 性差医療センター
http://www.fmu.ac.jp/byoin/06seisa/index.html

センター部長 小宮 ひろみ

歩く女性の後姿

 

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