天野理事長ブログ&スケジュール

2023.03.31

野菜スープと血圧

関門医療センター 早野智子先生からの投稿です。

 

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雑誌「ハルメク」がNAHW事務局より自宅に届いたのは、昨年の10月下旬でした。 2022年10月号の「ハルメク」を早速手に取ると、6ページにわたって天野惠子先生に関する特集が組まれ、<100歳まで現役を目指して自分自身を実験台に老いを研究中です>との見出し。帰宅してお風呂を沸かす間に、興味深く読み進めると、天野先生の日常生活・貴重なルーティーンなどが写真入りで掲載されていました。中でも目が吸い寄せられたのは、 <5年前から毎日飲んでいる野菜スープ。キャベツ、ニンジン、タマネギ、カボチャなどを入れ、沸騰したら後は弱火でコトコト30分。調味料はなし。味覚が変わり、糖尿病と血圧が改善したそうです。>という見出し付きのキッチンでの写真です。

ちょうど、毎日の自分の食生活で<塩分をとりすぎてはいないか>と気になっていた私には、まさに朗報でした。昨年1月からコロナウイルスのクラスターが、市中および勤務先の病院内で繰り返し発生し、自主隔離の日々が続く中、時短にスーパーマーケットの惣菜を買うことが増えていました。とくに焼き魚や煮魚を自分で調理すると、臭いや後片付けが大変です。つい、惣菜として買うのですが、昼の弁当に詰めて、いざ食べる段になると、その塩辛さに閉口していました。冷凍食品も、調理過程で塩分が多く含まれていると見聞きし、活用する手が鈍ります。そこで早速、自分も<天野先生ご実践の野菜スープ>を雑誌に書いてある通りに作り、毎朝・毎昼に食べることとしました。

 

この時に天野先生にメールで、野菜スープに関する貴重な記事についてお礼を申し上げたところ、野菜スープには種本があると伺いましたので、下記にご紹介させていただきます。

熊本大学名誉教授 前田 浩先生の抗がん剤の世界的権威が直伝!

「最強の野菜スープ」

―がん予防には野菜スープが一番!高血圧、糖尿病、白内障、アトピー、シミも改善!

前田 浩著  マキノ出版  です。

 天野先生が上述の野菜スープを実践されたところ、<血圧はあっという間に下がり、その理由が、前田先生によるフィトケミカルの効果というよりは、舌の味覚が変化するためと確信しました。塩分にも、糖分にも舌が敏感になるのです。>と実感されたそうです。

私も、本を購入し、3日に1度作り置きの形で、野菜スープを日々の食生活に取り入れました。朝は野菜スープに、ティースプーン半分弱の味噌と焼きメザシ・豆腐を入れて味噌汁代わりにいただきます。昼には、買い求めたスープ用魔法瓶に野菜スープを入れて、弁当と一緒にいただきます。それまで、野菜不足を自覚していた私には、ありがたい食改革でした。ただ、朝の味噌とぬか漬け、そのほかの惣菜の塩分量が多過ぎるかは、まだ検証できていません。

12月末に実家で、90歳に成りたての母が恥骨・仙骨骨折を発症し、コロナ禍で院内はクラスター一色のなか、1か月半ほど自宅療養を必要としました。電動ベッドで寝た切り生活の期間、食事は3日に1度私が作る野菜スープとスーパーマーケットの惣菜が主体となりました。母は、野菜スープに味噌を入れることなく、朝昼食べ続け、朝夕の血圧は、それまでともすれば130~150/80mmHg代で、ARBまたはCa拮抗剤を頓用していたのが、110~100/60mmHg代となりました。持病に腎機能低下と慢性心不全・心房細動があり、以前から週3回利尿剤:アゾセミド15mg/日を服薬はしていますが、その投与量は野菜スープ摂取開始前から変わっていません。今日、3月26日も母の血圧は104/62mmHg~97/54mmHgと朝夕安定しています。

一方で、実家で母と飲食を共にしている父は、私の作った野菜スープに味噌を自分で入れて食べています。父が入れる味噌の量が多いと母があきれる中、父の血圧はそれまで120/70mmHg代であったのが、味噌を自分でスープに入れるようになってから、130/80mmHg以上に上がることが増えました。そこで、1日に食べる味噌の量を母に管理させて減量したところ、なんとか120/70mmHg代後半に血圧が戻りつつある印象です。

私個人の血圧は、昨年から110/60mmHg代が続いています。約6年前の血圧は、常に90/50mmHg代でした。この血圧の上昇は、塩分過多が由来なのか、加齢変化か、塩分過多・加齢両方の影響なのか、今後の血圧の推移とともに、何らかの方法で検証してみたいと思っています。

日本は一般的に他国より食塩摂取量が多いとされており、「健康日本21」と呼ばれる10年間の国民健康づくり運動(第2次)において、2023年までに日本人の1日の食塩摂取の平均値を8gに減らすことを目標とされていますが、2019年の最新データによると、日本人の平均食塩摂取量は10gを超え、目標値を上回っており、現在の傾向が続く限り、目標達成は難しいと考えられているようです。

その中で朗報ですが、この3月20日に東京大学が、<減塩のために、日本発の「うま味」を取り入れると、成人における1日当たり食塩摂取量に対し、22.3%の減塩インパクトが期待できる>と発表したそうです(東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学分野 野村周平特任助教 BMC Public Health掲載)。

 

 血圧上昇の要因は複数ある中、すでに動脈硬化が進行しているケース、例えば、橋本病や膠原病等の背景疾患があるケースでは、減塩のみで血圧がどれほど下がるのか、など、今後の見極めに興味は尽きません。外来・病棟で、おひとりおひとりの血圧管理に取り組みながら、減塩の効果が最大限、健康増進に活かせるよう、検証方法を探して取り組んでいければと考えるこの頃です。

 

国立病院機構 関門医療センター 早野智子

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