天野理事長ブログ&スケジュール

2021.09.13

コロナ禍の女性外来~近況報告

千葉西総合病院 健康管理センター長 小西明美先生の投稿です。

コロナ越境抑止表示

 2020年の年初は、隣国で正体不明の感染症が発生したとの噂はあったものの、日本では念願のオリンピックが開催される特別な年の始まりでした。

しかしその後瞬く間に噂は現実となり、世界中に感染が広がって、感染症の正体は、COVID19coronavirus disease 2019) と命名され、3月にはWHOによって パンデミック宣言が出されました。

 

 当院でも、感染対策のため、あちこちに消毒液が設置され、発熱外来設置の為の模様替えや、今では当たり前になった出入り口でのトリアージが始まりました。最初の緊急事態宣言の際には、私の主な仕事場の人間ドックは一時閉鎖され、その間は電話投薬の業務に携わることになりました。主治医が決まっていない患者さんや、担当する女性外来の患者さんの希望者に、電話で病状を伺い、適切なアドバイスや定期処方などを行う業務です。必要な業務を終えて、最後に「お大事になさってください」と伝えると、電話の向こうからは「いつもありがとうございます。先生方もどうかお気を付けて」とか「頑張ってください。」という励ましの声をいただくことが沢山ありました。

 

 女性外来も場所を移動し、淡々と続けておりましたが、不要不急の外出は控えるようアナウンスされる状況下、予約通り来院されたある患者さんは、「私のような病状で病院にきてよかったのでしょうか?」と心配顔でした。院内の様子が変わっていることにも戸惑っている様子です。しかしいつも通りに診療を終えると、「先生がお元気で、ほっとしました。」と何やら安堵の様子で帰って行かれるのでした。会って言葉を交わすということが、単純ですが重要な治療だと改めて実感することになりました。緊急ではないかもしれませんが重要な事柄について、「不要不急」の取り扱いも難しいものだと思いました。

また、患者さんから心配され、励まされるという体験は、コロナという共通の敵と戦う同志といった感じで、これまでの医師と患者の関係よりも患者さんとの距離が近くなったような気がします。

 

 事態がそのうち落ち着くかもという淡い期待は打ち砕かれ、2020年の半ばには、敷地内にプレハブのコロナ病棟が建てられ、すべての入院患者さんや、リスクの高い検査予定の外来患者さんにはPCR検査が実施されるなど、感染対策はより厳重になりました。受付や診察室には手作りのパネルが設置され、フェイスシールドとマスクのいで立ちもあって、患者さんとの物理的な距離はかなり遠くなりましたが、患者さんからは「先生のそのピンクのフェイスシールドはかわいいですね。」などと、比較的明るい受け止め方に少しほっとしました。

 しかし、色々な問題を抱えてさらに困窮している患者さんもあり、「もっと大変な人がいるのだから、自分のこんな悩み位は・・・」と、中には、自分の病状を過小評価して、受診を控えた方もあったのではないかと思います。DVや虐待が増えているという報道もあり、「重要なこと」が片隅に追いやられていく危惧を感じました。

 

 女性外来や人間ドックを通してみると、コロナ禍の患者さんは、体の健康面では、やはり外での活動量が減って、体重が平均23kg増加した方が多く、TVの報道も、おうち時間のグルメ番組が多くなり、家トレだけでこれまで通りの健康維持は難しそうです。メンタル面でも、コロナ感染の脅威だけでなく、会話や、外出など様々な制限により、程度の差はあれうつ傾向が増した方が多く見受けられました。介護や育児に対する社会的な支援が制限されてより生活が大変になった方、リモートワークになったことで、家事との両立ができる反面、育児と仕事のオンオフが難しくなった方、同僚のサポートがないので、リモート業務がより多忙になった方、中には夫の在宅時間が増えて悩みも増えた方、多忙で余裕がなくなった行政関係の方、肉親の葬儀が思うようにできなかった方など、いろいろな面で困難な状況に直面した方が多かったようです。

 

 もちろん、その一方で、少数ではありますが休業やリモートで浮いた時間を有効に使って、運動や新しいことにチャレンジした方もありました。私自身も学会や研究会などがリモート開催になった当初は、戸惑いましたが、普段はなかなか同時に聴くことができない講演を、いくつも聴けるなど良かった点もありました。しかしいつも受けていた漢方の講義は、リモートではその場の臨場感や、講師や参加者との交流が今一つ物足らなくて、対面で患者さんに対する時と同様に、その場にいることの価値を改めて実感することになりました。

 

 コロナ禍で生きるという経験は、これからの社会がどのような形に落ち着くのか、自分自身もどのように変化に対処していけばよいのか、本当に「重要なこと」は何で、どう守っていけばよいのだろうかなど、様々なことを考えさせられる機会となりました。そこで、この度は、この1年余りで起こったこと、感じたことを思いつくまま記載することにした次第です。その昔、中国ではやった瘧が、「傷寒論」を生み出すもとになったように、2019年末から始まったコロナ感染は、社会の変化を加味して、どのような新たな「傷寒論」を生み出すのか注目していきたいと思っています。

                 

千葉西総合病院 健康管理センター 小西明美

千葉西総合病院 http://www.chibanishi-hp.or.jp/

 

 

 

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