天野理事長ブログ&スケジュール

2021.08.03

予防医学・医療を考える

虎の門病院付属健康管理センター医長 大本 由樹先生の投稿です。

 

元気な女性

 

久しぶりにコラムを書かせていただくことになりました。

いつも、先生方が勉強になるコラムを書かれているので、色々考えているうちに結局、徒然なるまま書くことにいたしました。どうかご容赦ください。

 

早いもので気づくと10年以上人間ドックに携わってきました。

人間ドックというと、目的としては癌の早期発見、および生活習慣病の診断・指導が主な役割です。ただ守るべき生活習慣は、どちらも同じだと常々思っています。

 

今では当たり前の知識ですが、例えば糖尿病を患っている方は動脈硬化疾患にかかる率がそうでない方より高いのみならず、がんの罹患率も高いのです。

 

受診される方にもよく“健康でいられるにはどのように生活すればよいでしょうか?”と聞かれますが、

“食事・運動・睡眠(+ストレスコントロールなど、、)”なのです。

と当たり前の話をしてしまうのですが、それは、

がんになりやすい生活習慣=生活習慣病になりやすい習慣

ということで、同一だからです。

 

●食事について

1)バランスよく食べる

2)野菜・食物繊維を多く摂取する(食物繊維には穀物にも存在し、特に全粒穀物摂取が糖尿病リスク低下、大腸がん抑制などに寄与)

3)肉の脂(動物性脂肪)はほどほどに

4)魚を多く取るようにする

5)加工食品は極力取らないようにする

6)発酵食品を取るようにする(*)(日本食である 納豆や味噌などがおすすめ、塩分過剰摂取は注意)

と、お話します。

“医食同源”や東洋医学で言われる“養生”などは、これを的確に表現していると思います。

 

*最近私が強調するのは、腸内細菌のことです。腸内細菌研究がここ数年進歩し、それぞれの疾患に罹患した方が特徴的に多く持つ細菌のことが解明されてきました。したがって腸内環境を良好に保つことが大切であること、その環境を整えるための発酵食品や腸内細菌の餌となる食物繊維のことをお話することが多くなりました。

 

●運動について

運動が重要であることは、だれでも理解できることだと思いますが、運動が得意でない方、また忙しく、なかなか思うように時間が取れないと感じる方も多いと思います。

運動としてあえて時間を見つけなくても、身体活動として、日常生活で行う作業なども運動にはなります。(**)一番よくないのは、長時間座ったままであることだといわれています。(sedentary work)例えば、イギリスのバスの運転手と車掌では、運転手は座位の時間が長く、車掌は動いている時間が長いわけですが、運転手は車掌と比較して、心血管病発症が40%ほど増加するとのことです。

今よりも少しでも動くことを考えて、厚生労働省では+アクティブ10というスローガンを掲げています。私自身、日常生活で万歩計ではありませんが、歩数や消費カロリーをモニターできるものを使用しています。日々の活動量を見ることによって、少な目の時は少し多く歩こうなど工夫するようにしています。また立ったままできる仕事は立ったまま仕事をすることも取り入れています。(私の場合心電図の読影など)

 

**例えば、少し歩くスピードを変えてみることでも運動量は変わります。ご自身のできることから勧めてみていただくことをお勧めいたします。

厚生労働腸のeヘルスネットに歩き方による運動強度の違いの動画があります。

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-08-002.html

 

また、有酸素運動のみならず、レジスタンス運動を加えて、筋力を維持することが、ロコモティブシンドロームやサルコペニアを予防するうえで必要になってきます。

https://locomo-joa.jp/check/locotre/

 

●睡眠について

睡眠と生活習慣病(高血圧・糖尿病)や疾病の発症、特に心血管疾患発症と深く関連しています。

睡眠時間と死亡リスクの関連は7時間が最小といわれていますが、年齢によっても必要な睡眠時間は変化し、年齢上昇に伴い、必要睡眠時間は減少します。(65歳くらいで6時間)必要睡眠時間の個人差もありますし、睡眠の質も重要といわれていますが、量より質というのは間違いだそうです。睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠があります。短時間睡眠となっても、ノンレム睡眠の深い睡眠は担保されますが、短時間睡眠によって削られた浅い睡眠も身体にとっては大切な要素だそうです。ですからある程度の睡眠時間の確保は必要のようです。

年齢を重ねるごとに何らかの睡眠の問題を抱える方は増加しますが、睡眠環境を整えるために

1)朝(ないしは午前中に) 太陽を浴びて、夜はあまり遅くまでパソコン・スマホは使用しない。夜の照明は少し暗めに。

(体内時計の調整)

2)カフェインとアルコールには注意する。

(夕方以降のカフェインは睡眠の質を落とすことが多い。アルコールは分解後のアセトアルデヒドに覚醒作用があるため、睡眠の質は悪化する)

3)寝る前にリラックスを心がける

 (何か気になることがあると眠れませんし、そもそも眠れないかも、と考えるのは眠れなくなる元なので、瞑想したり、深呼吸をしたりして頭を空っぽにすることが大切と思います)

4)生活サイクルを大きく変えない

などお話します。

***ちなみに睡眠については2019.6に関門医療センターの早野智子先生が書かれたわかりやすい記事がありました。

 

つれづれなるままに長々と書いてしまいました。お付き合いいただき、ありがとうございました。

人生100年時代、早期発見・疾病予防が元気で長生きするために必要と考えて、自分にできることはなにか、と考えながら仕事をしています。まだまだ勉強不足なので、日々学びながら診療しています。

 

 虎の門病院付属健康管理センター医長 大本 由樹

 

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